第三章 海上にて勝負は決する
二十二、奇襲作戦
俺の考えた筋書きはこうだ。
義経たちをこの船に迎え入れ、亡命を手伝う振りをする。
そして、隙を見て……討つ。
「ウチの
まず、ジャックに宿泊を促してもらい、どこかの機会で「亡命」の話を切り出す。
そもそも客になってもらわなきゃ破綻する計画だが……そこは、ジャックの交渉術を信じるしかない。
「私は構わない」
「……確かに、宿は決まっていませんがねぇ……」
仮面の騎士は凛と答えるが、クエルボと名乗った赤毛野郎は警戒しているらしく、探るような目付きで船の方を睨んでいる。
「安くしておきますよ! ウチなら甲板の上で食事も取れます! 今日はよく晴れているんで、絶景ですよ~」
ジャックはどうにか興味を引こうと必死に「宿」を売り出す。
「ふむ……」
クエルボはじろじろと船の奥の方にまで視線を投げる。
……まさか、殿下を探していやがるのか……?
「まぁ、我らが騎士は『構わない』とのことですし、僕もそれに従いましょうか。ペドロも構いませんね?」
「……クエルボ殿、今の私は『ペタロ』ですよ」
「どちらでもいいじゃないですか」
何とか泊めさせることには成功し、ジャックが額の汗を拭ったのが見える。
……さて、大事なのはここからだ。気を引き締めねぇとな。
***
他の客と同じように船室に案内し、食事の時間になれば呼ぶと伝える。
その隙にカサンドラとロレンソを倉庫に呼び、今後について話した。ジャックに野暮用ができたため、アリーを殿下の傍に控えさせ、部屋に防御魔術をかけてもらっている。……もっとも、長時間発動させる魔術は消耗が激しいと聞く。話し合いは手短に終わらせたいところだ。
「しかし……そのような策、上手くいくのか?」
カサンドラは訝しげにぼやく。
無理に協力しろという気はなかったが、どうもカサンドラは殿下に絆されつつあるようで、ここまで特に文句を言うことなく説明を聞いていた。
「そうだな……あの『正義の道』を相手にするならば、正攻法では難しい。奇襲をかけるというのも理に
ロレンソの方は、カサンドラの腕の中で難しい顔をしている。
「だが、向こうにもやましい考えがあるならば、こちらからの提案には警戒してこよう。……そこは、どう乗り切るつもりだ?」
「そこなんだが、ジャックがいい案を思いついたらしい」
首を傾げるカサンドラに、瞬きをするロレンソ。
倉庫の扉を開けると、ジャックが自分よりも頭一つは大きい鎧を引きずって現れる。
「
顔を見合わせる二人を手招き、作戦を耳打ちする。
義経たちにはひとまず、他の客と同じように過ごしてもらえりゃいい。……動くなら、明日だ。
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