第17話 運命の輪


佐川悦司は、三沢えりこの招待状を持って、東京スカイに向かった。


「えらく、いいところでやるんだね。」


えりこは、自信満々に胸を張った。

イベントガイド本に、レンタルできるって書いてあったんだ。

駄目元で、交渉したら、許可が下りて…。


「ファッション賞の新人賞をノミネートされたって言ったんだ。」

えりこは、当然のように、言い放った。

「それにしても…。」


悦司が、驚いていると、えりこは、

「友人と最後の打ち合わせがあるから。」

と、バックステージに戻っていった。


えりこは、何を摑んでいるんだ?


まるで、学生にしては不似合いな、豪華なショーだった。

モデルは、慣れたふうに、ランウェイを優雅に歩いた。

モデルがポーズを取ると、プロらしいカメラマンがフラッシュを光らせた。


茫然として、夢心地になりながら、

なにか、得体の知れない何かに触れたような、一抹の居心地の悪さ。


東京スカイの玄関から出たところで、黒いセダンが停まっているのを、悦司は見た。


あれは…。


セダンから、降りた女。


それは、宇津見凪子の喪服姿だった。

凪子の元に、えりこが走り寄って、二人がハグしたのを、悦司は見た。



―つづく―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る