第一〇五四回 始まりは仮面の舞踏会。


 ――この場所でXマスパーティー。どうかしら? と誘われた。


 何だか、御伽話でよく見る舞台。社交ダンスなど踊っていそうな、そんな感じ。



 そして訊かれる。……仮面を装着する? それとも素顔がいい? 仮面といえば、浮かぶものは、ドミノマスク。マリーちゃんの、この質問の意味は誰に向けられた質問?


 僕の横には、松近まつちか君がいる。


 笑みを浮かべて、マリーちゃんは質問する。


 含みのありそうな質問に対し、あまりにもあどけない瞳。見た目とマッチしている。あどけないからこそ、斬り込むことに迷いはないようにも……第一、世間から見たら、高校生の子が妊娠していることに問題があると思われるのだけど、この笑顔のまま、マリーちゃんは受け入れてくれた。生徒会よりも上の立場にある目線からも……


 すると!


 ドミノマスクよりも、やはり素顔ですね。……小さなマリーアントワネットさん。

 と、僕をチラッと見てから、松近君は質問に答えた。多分、僕の代わりにだ……


 感謝の念。浮かぶ松近君の表情に。


 少ししかめっ面をしていた彼の表情は、とても安らかなものに変化していた……


 あまり見なかった表情? 初めて見た表情のように思える。


 もう答えは出たようね、と、マリーちゃんは渡した。ホワイトカードに描かれた、ある種の招待状。それは僕にも。そして「Xマスパーティー、お誘いするわ」と、手渡しも手渡し。それから「これからも宜しくね、二人の生徒会のお仲間さん」と、丁重にご挨拶。


 この四階のお部屋は、本当に広い式場。


 ここもマリーちゃんのお部屋なのだから驚き溢れる。


 廊下には、レッドカーペット。そこから伝わる道程を歩み、色々と案内してくれたの。


 マリーちゃんは終始ご機嫌で、


「お友達を連れてきたの、本当に何年ぶりかしら」とも、声まで発して。



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