第三三〇回 あさいち!


 ――今日はもう三箇日さんがにち朝一・・


 そう自覚するには、少しばかりのお時間が必要だった。



 脳はまだ夢の中で、ぼんやりと白い世界が広がる。ちょっぴり冷たく感じる空気。息まで白くならないけど、お布団の中の温もりを合わせると……露天風呂のようで。


 でも、まだ夢の続きなら……海の中。


 僕らはマーメード。お布団の中は梨花りかの体温も混ざり合っている。スヤスヤと……眠る梨花の顔は、とても可愛く息もかかるほどに近くて……その唇の感触を、もう一度だけ試してみたいという衝動にかられ、僕は自ら顔をもっと、密になるほど近づける。


 重なる唇……


 で、パチクリと目を開く梨花……


「ちょ、ちょっと千佳ちか


「おはよっ、梨花」


 梨花は面白い顔……ではなく、戸惑った顔?

 僕はまだ、それほど実感はなく……まだ夢の中にいるようで。


「目覚めのチュー?」


「うん、そんなとこ」


 夢と現実リアル丁度間ちょうどはざま、そこにさえも笑顔が芽生え、咲き誇るの。


「おやおや、本当に仲がいいのね」


 と、声が――。お部屋に、お祖母ちゃんの姿が。そして僕の声と梨花の声が呼吸もピッタリに、声質もピッタリで、綺麗なハーモニーを奏でたの……


「おはよっ、お祖母ちゃん」と。


「おはよう。梨花、千佳。今日はお祖母ちゃんと一緒に、羽根つき・・・・やろうか」


 ……羽根つき? って何? という具合に僕も梨花も、わからないことで。


「そんなに心配せんでも、お祖母ちゃんが教えてあげるよ」……と、言ってくれた。



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