第二七九回 ……そう。その行方には、煌めく夏の記憶。
君が覚えられなくなっても、
そう、僕が……
僕らが覚えている。君の分まで……
確かに君は此処にいた。僕らの煌めく夏の記憶。
そして、
そして沢山の足跡を残して……忘れられないよ。
――
芸術棟の一階の奥深く……歩んでゆくとね、百号のキャンバスいっぱいに描かれた『天使のうたたね』が、堂々と存在感満載に、聳えるほどに、その姿を見せるの。
二階で
僕と
けれども、けれども、葉月ちゃんが加わって、加入してからは、
――レボリューション。『天使たち』から『たち』が消えたの。
この絵はね、皆が描いた作品だから。
そしてまた、……葉月ちゃんの足跡が、しっかりと残った作品。
この絵が仕上がるのを皆で、
最後は葉月ちゃんの持つ筆、葉月ちゃんの手で完成した。笑顔も中にはあったのだけれど、最後の力を……振り絞っていたの。それが、金曜日の夕映え。
夕映えのお空、笑顔で別れることが、
僕らの暗黙の、約束だった。そのはずだったの……
でも、でもね、葉月ちゃんは涙を見せた。この一週間で初めて……
ぎゅっと、僕の手を握るの。その手は、殆ど力が入っていなかった。
「……っ、怖いの。一人に……しないで」と。笑顔の奥にあった表情を……
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