第二六一回 その問い。そして納得いくように。


 ――何が足りなくてモヤモヤしているのか?



 その問いに答えることが先だ。前回のエピソードの対する、……その問いに。


 実はね、梨花りかも同じことを、僕に質問した。

 目覚めたら、茜色のお部屋、僕の目の当たりに現れた。今宵はお泊りに来た。


 窓の外から伝う、茜色……


 二十四日のイベントは、僕らの集大成と、令子先生は語っていた。なら、僕らの足跡を残す義と、僕はそう理解した。様々な形で、型に囚われずに表現する。



 去年は演劇という表現。本年は、芸術という表現だ。


 その名の通り、芸術棟そのものが、この度の作品と、そう答えても過言ではない。

 梨花は、そっと僕の手を握る。そして言う「やろう」と。


 芸術棟の一階に映える大ジオラマ。おもてなしの可奈かなのダビデ像。密林の王者みたいな太郎たろう君のダビデ像。作品を紹介する葉月はづきちゃんのダビデ像……そして僕ら、僕と梨花が共同の『天使のうたたね』――と、関わるメンバーの足跡となっているのだ。


 つまり、この度のテーマは『足跡』なのだ。

 だったら、僕らは大切な人を忘れていたの。ううん、人たち・・



 ――僕らの今を築いてくれた人たち。


 令子れいこ先生、そして瑞希みずき先生のご両名。この人たちの足跡も、残してあげたい。……わが師の恩なの。涙溢れる切なる想い成立。それがモヤモヤまたは、足りないことの原因。


 そうだね。


 原因がわかれば、あとは行動あるのみだね、梨花。


 僕らは心を決め、意気投合。そして、意を決する。まずは執筆、この思いを乗せる。僕と梨花は、夕陽のお部屋で二人……同じ思いに立ち、このエピソードを綴った。



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