第二一三回 レッツ! 自己紹介から物語は始まるよ。


 ――僕は千佳ちか梅田うめだ千佳。よろしくね。


 と、まずは自ら名乗るのが筋ということなので、名乗らせて頂いた。だからこそ、君の名前を教えてもらうことができたのだよ、葉月はづきちゃん。やはり君は……この学園の子ではなかった。どの学校の子でもなく……訳ありの子。令子先生は、葉月ちゃんをお家まで送ることに意を決しているようなので、僕も……僕たちもそれに便乗することとなる。


 梨花りか可奈かなも、アイコンタクトでOKの二文字だ。



 まずは……この学園から近所と思われるが、葉月ちゃんがお家まで無事に帰られるのかが何よりも心配だ。僕の憶測だけれど、葉月ちゃんはお外に出たことがなかったように思えるの。車椅子も、お外ではあまり乗ったことがないように思えて……どうしてそう思うのか? きっと令子れいこ先生がそう思ったように思えたから。……実は、令子先生の勘は鋭すぎる程で……ううん、本当に鋭い。僕の思っていること必殺必中で当てるからなの。


 それから葉月ちゃんの名字はね、何と『星野ほしの』……


 僕も、かつては同じく『星野』だったけれど、もっともっと近い距離間をもって、

 ブンブン! と両手を握り葉月ちゃんの。見るからに嬉しさ満開で梨花は燥いで、


「君も『星野』なんだね。もしかしてまたまた遠い親戚かな? 僕は星野梨花、よろしくね、葉月ちゃん。……でねでねでね、この子も、そしてこの子もまた、元を辿ったら『星野』なんだよ。ウフフ、これって運命だね」……って、ちょっとちょっと梨花、葉月ちゃん何だか圧倒されているというのか、ややドン引きのような感じだけれど……


 まあまあまあ、大丈夫かな?


 葉月ちゃんは興味津々のようにも見えるから……僕たちに。だからこその、もう一人の『この子』……名札を見ると、梨花の制服の名札が『星野』であるように……

藤岡ふじおか


 藤岡可奈も、梨花と一緒に紹介することができた。


 元を辿れば同じ『星野』……葉月ちゃんが僕らに興味津々であるように、僕らもまた葉月ちゃんに興味津々。そして、葉月ちゃんはアクリル絵にも興味津々のようだ。



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