第二十八章 ――激闘編。

第百四十六回 ウメチカ戦は、予定通り行われるからね。


 ――新型ウイルスのニュースで困惑する中、『第一回℮スポーツ・ウメチカ戦』は予定通り開催されると、同・午前六時半のニュースで謳っていた。全国ネットだ。



 それから、ついでではあるけど、

 北陸のテーマパークのCMも一緒に……


 その地は、お母さんのお母さんがいる場所で、そのテーマパークから近い場所と、お母さんは言っていた。その二大イベントを、どうしても叶えたい。――みんなのため。


 それに伴い、

 僕は、この度の章を、――激闘編。と名付けた。覚悟の章タイトルだ。


 でも、その前に……

 今宵は七夕の余韻。それに浸っている。少しばかり大人のムードなの。


 僕と太郎君は今宵、

 ……まるで織姫おりひめ彦星ひこぼしのような、その様な恋模様を演じる。一年ぶりの再会、それが共通点だから。――初恋から、そしてチューからキス。ハグから抱擁へと……その先は、その先はというと未知なる世界で、もう冷たく乱暴なものの存在は薄れて……その未知なる世界へと上書きされる。乱暴とは根本的に異なる太郎たろう君の愛。しっかりと上書きされる。


 その場所は縁側……と、言いたいところだけれど、

 普通の広場。公園とも違う。梨花と二人、葛餅を頂くそんな中で太郎君が訪ね、梨花は行っといでとばかりに、僕と太郎君の二人きりでの散歩となる。「綺麗だ」と言ってくれる太郎君。……それは、僕の浴衣姿。お花の髪飾りもしている。


 その浴衣は、梨花とお揃いで向日葵の柄に、藍より青しの色。着る前にはシャワーを梨花と一緒に浴びたから、ほんのり石鹸の薫りを残す。太郎君がその薫りを少しばかりでも堪能していると思うと、やっぱり恥ずかしくて顔が少し火照てくる。


 またその浴衣は、梨花のママが仕立ててくれたもの。僕へのプレゼント。そしてこの度の七夕で、僕は生まれて初めて浴衣を着た。そして月明かりの中で、キスをした。



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