第八章 そして『二〇二〇年の夏物語』を、僕は描きたいから。

第三十六回 (この画面の向こうにいる)あなたは誰?


 ――でもでもでも! その前に、まずは冷静に、今の状況を報告することからだよ。



 僕は今、三十六インチの画面を、……さらには倒され、倒れている僕のアバターという表現でも通用しそうなキャラを目の当たりにしながらも、刻々と……時計の針は刻む。


 只今の時刻を表すのなら、

 二十四時間表示で十四時五十分。僕の黄色い時計が、そう表示している。



 ……開いた口は塞がらないままで、

 一体何が起こったの? との、胸中でその繰り返し。


 最強を誇るゲーマーのこの僕が、反撃する間もなく一方的に、華麗なまでに意図も簡単に負けたのだ。繰り返し思っても、どの方向から考えても、……負けたという現実は、もう変えられないのだ。


千佳ちか、ドンマイ!」


 プレー中に乱入され、僕との対戦を乗っ取られたお母さんだったけど、――笑顔! そう、僕に笑顔を見せながら、僕の背中をも押すようにと、そう励ましてくれた。さらには続けて、同じ一言多いでも「さあ千佳、プレー再開よ!」とまで言ってくれた。


 ……もうマイナスな要素なんて、そこにはない。


 そう思えた瞬間だった! 放心状態の僕が、再び目に色を取り戻して、


 プレー再開! 画面狭しと動くキャラ二体、激しきバトル、されど親子の対戦は頬が綻ぶほど和やか。「楽しい」というオーラ―が、この四畳半のお部屋いっぱいに広がる。


 ――その空気のまま、その雰囲気を心に保って、今宵もまた『ウメチカ』というエッセイの執筆に励む。その執筆の時間を利用し、今一度、我がゲーム機の仕組みを説明したいと思っている。……ゲーム機といえばTVゲームを連想するが、このPS4・5は架空の産物でありながらもオンラインが特徴。PCと同じようにネットで繋がっている。と、するなら、……相手は、間違いなく僕のことを知っている。それも、身近にいる人物だ。



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