第七章 さらに、その先へ。

第三十一回 その前に、千佳が零した涙の理由とは?


 ……前回から続き、四畳半の部屋。


 このお家に越して生まれて初めての僕のお部屋。その空間には、僕のイメージカラーである黄色。その色をしたNPCノートパソコン……起動中で、


 今日もまた、更新を目的としたエッセイを綴っている。つい数時間前までは、この空間を埋め尽くすほどの人がいた。……それも溢れて、僕も含めて六名の人たちが。



 ――今は、もうこの空間に一人。僕だけのもの。


 梨花りかのお部屋のようなビッグなウインドウはないけれど、四角い窓から見えるもの。


 それは下弦の月。

 今宵は下弦の月。……繰り返す思い出を、この空間に連れてきた。


 それは、それはね……

 僕のために、パパたちは三十六インチという大きさにも拘らずに、設置してくれた。


 僕のために、可奈かなはその設置したゲーム機に、機能を吹き込んでくれた。


 そして、それから、

 僕のために、梨花は……本当に慣れてもいないゲームというジャンルにも拘らず、僕の相手をしてくれた。思えば思うほど不器用な子……でも、不器用な子だから、



 ――そのことも含めて、

 今日の出来事を思い返しながら、この更新予定のエッセイを綴っていると、

 ポロポロと……涙が零れてくる。


 自分でもどうすることもできず、なす術もなく、マジ泣きにまで至る。その中でも一番は、帰り際の梨花の言葉……


「また来るね」……たった一言だけど、思い返し深ければ深いほど、泣けてくる。


 少し前なら、思いもしなかった出来事に包まれ……例えるならば、春の囁き、その温もり。梨花たちのカラーが、僕の心を開いてくれて……本当に素敵な人たちだった。



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