二皿目
今日は寒い一日だった。
今年は暖冬とは言えいきなり氷点下になったりもして気を付けないといけない天候が多い。
そんな事を思いながら家に着くと、早速みさきがやってきた。
「お帰り~、寒い! ご飯!!」
「人の顔見るなり飯かよ!?」
「いいから早く~」
家に入り台所へ向かうと‥‥‥
「おいこら、炊飯器のスイッチ入れ忘れてるぞ?」
「寒いからお米研いでないもん」
しれっと言いやがる。
じゃあ何か、今まで何もしてないで晩飯の支度もしてなかったのか!?
これから白米炊くとしても早炊きでも三十分以上はかかる。
私はしばし思案する。
おもむろに冷蔵庫の中身を見る。
豆腐に半額のアサリ、ネギに玉ねぎ‥‥‥
また買い物してねーな!!
幸い調味料類はある。
どうしたものか、この少ない食材で何とかしなければ‥‥‥
ん?
コチュジャン??
もう一度冷蔵庫を見る。
卵もあるな。
よし!
私はエプロンをかける。
さあ、始めよう!
餌付け用の品を作り始めよう!
本日はこれ。
<テンジャンチゲとふわトロ卵焼き>
1、米を研いで研ぎ汁をボールに取っておく。これはなるべく最初の濃いめのを取っておく。
2、土鍋に研ぎ汁を入れて火をつけ沸騰させる。沸騰したらかつおだし、煮干しの粉を入れる。
3、韓国味噌のサムジャンとコチュジャンを入れて良く溶かす。
4、アサリはさっと水洗いしてそのまま土鍋に入れる。玉ねぎ、豆腐、長ネギの青い部分を切っていれる。
5、輪切り唐辛子をパラパラ入れてから味の素を入れ味調整。
6、後は弱火でコトコトしばらく煮る。
7、ボールに卵、牛乳少量、オリーブ油、塩、ブラックペッパーを入れて良くかき回す。
8、フライパンに少量のオリーブ油とバターを入れて溶かす。ぷつぷつ泡立ってきたら菜箸につけた卵がすぐに焼けるかどうかフライパンをこすって確かめる。すっと菜箸でフライパンの中で卵がふわっと焼けるのが目安。
9、フライパンの中に卵を入れてさっとかき混ぜる。真ん中にスクランブルエッグのようなだまが出来たら真ん中あたりにとろけるチーズを入れてフライパンの端に手を振動させてオムレツにする。この時やや半熟でやるのが出来上がりにふわトロになるコツ。
10、カット野菜を袋から取り出しお皿に盛ったらその上に卵焼きをのせる。
11、トマトケチャップをかけて出来上がり!
ちょうどご飯も炊けた様だ。
いったん炊飯器のふたを開けて湯気を出し、もう一回蓋を閉める。
しばらく蒸らしたらしゃもじでご飯を切るように混ぜる。
そしてもう一度蓋を閉める。
こうするとご飯の水分が均一になって張りの有る白米になる。
食卓のテーブルにふわトロ卵焼きを置いて鍋敷きを準備する。
土鍋のふたを開けてちょっと味見。
うん、悪くない。
やけどしない様に鍋敷きの所まで持って行って鉄のスプーンを用意する。
冷蔵庫の中にしまってある壺漬のたくあんも取り出してはい、完成!
こたつであったまっているみさきを呼ぶ。
「ほれ、ご飯できたぞ! 早く来い」
ゆるくあったまっていたみさきはやっと重い腰を上げる。
「寒いよぉ~、こたつで食べようよぉ~」
「だめ! こぼすでしょ!! はい、いただきます」
「いただきま~す」
文句を言いながらも食卓に着けさせて土鍋のふたを開ける。
「おお~! あったまりそう! キムチ鍋?」
「違う、テンジャンチゲだ! ほれスプーン」
「ほえ? 取り皿で小分けにしないの?」
私はそのまま土鍋にスプーンを突っ込んで具とスープを口に運ぶ。
アツアツのピリ辛の刺激が途端に口の中に広がる。
私はそのままスプーンで白米を口に運ぶ。
口の中に残っているチゲとご飯を口の中で咀嚼する。
うん、うまい!
「こうやって食べるのが良いらしいぞ、本場韓国だと箸よりスプーンで食べる方が多いらしい」
「へぇ~、面白そう、あたしもやってみよう~」
みさきはさっそくスプーンを土鍋に入れてスープと具を口に運ぶ。
「あつっ! あ、でも美味しいぃ! と、スープだけも一回、ご飯ご飯」
私と同じように両方を口に入れて咀嚼。
もぐもぐもぐ、ごっくん。
「おおぉ! 辛さにご飯が混じってちょうど好い!」
そう言ってどんどんとスプーンでテンジャンチゲを食べながらご飯も口に放り込む。
私も負けじとテンジャンチゲを食べ始める。
辛いのにコチュジャンのほのかな甘みに玉ねぎの甘さが加わって口当たりは辛さより甘さが先に来る感じ。
そして口に含むと魚介のうまみが口内に広がって日本人にも受け入れられやすい感じの味、みそ汁っぽい感じだ。
その後に猛烈に辛さがやってくる、しかしその辛さが来る前に白米を口の中に放り込むと中和されて狂暴な辛さを押さえる事が出来る。
一口二口と進んで行く頃にはだんだんと体も温まってくる。
アサリや豆腐、煮込まれた野菜もおいしく、既に茶碗のご飯は半分くらい。
ただ流石にここまでくると辛さも目立ってくる。
私はちょいちょいとスプーンでみさきに卵焼きを食べるよう催促する。
みさきは目を輝かせながらふわトロの卵焼きにそのままスプーンを突き立てる。
とたんに割れた口から半熟の卵ととろとろのチーズが出てくる。
「うおっ! チーズ入りだ!! これはテンション上がるよね!?」
そう言ってぱくりと口に運ぶ。
おっ?
目をつぶってスプーン握りしめ震えている。
そして心底嬉しそうに言う。
「うぅんまぁぁあああいぃぃぃっ!!」
卵焼き一つでずいぶんと大げさな奴だな。
私もスプーンですくって口に運ぶ。
テンジャンチゲの辛さで口の中が麻痺しかかっている所に甘みと酸味のきいたふわトロ卵焼きが広がる。
うまい具合にバターや油が絡んでくれて卵自体の旨味も十分に引き出せている。
そして更にとろけるチーズが口の中にまろやかな風を吹き鳴らす。
うん、これでリセット完了!
続きのテンジャンチゲ行こうか!!
その後二人して黙々と食を進め最後の方で壺付のたくあんをポリポリと。
あー、烏龍茶かほうじ茶が欲しいな。
食べ終わる頃には額にじんわりと汗もにじむほど体も温まっていた。
「うう、これって凶悪だよ、ご飯のお代わりしちゃった。また太っちゃうよぉ~」
「辛さで新陳代謝が促進しているからそれほどじゃないだろう? それに炭水化物の中でも白米が一番糖分の吸収が悪いらしいぞ? パン食よりずっといいらしい」
「でも卵焼きにもバター使ったでしょ? しかもチーズ入り! カロリーがぁァ……」
後悔しながらもまだテンジャンチゲの汁をちょびちょびとスプーンで口に運んでいる。
「間食とお菓子止めれば太らんて」
「それはあたしに死ねと言う事!?」
「なんでそうなるんじゃぃ! 三食で我慢していろ!」
「無理っ! ‥‥‥こうなったら夜にあんたを襲ってカロリー消費を」
「疲れてんだからやめんか!」
やいのやいの。
しかし洗い物もしなくてはいけない。
騒いで私の上に乗っかってくるみさきを押しのけ手を合わせる。
「ごちそう様!」
みさきも慌てて手を合わせて「ごちそう様」をする。
そしていつもの笑顔でお粗末様でした!
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