第33話・嘘

東城風とうじょうふう算学数さんがくすうが数学部の活動をしていたが、豊海瑠璃とようみるり西尾染杏にしおそあんが来た事により、数学部の活動からただの遊び時間と化していた。そして今は瑠璃が大量に買ってきたハンバーガーを皆で頬張っていた。


「ハンバーガーはやっぱり、照り焼きに限るな」

瑠璃はそう言ってチーズバーガーを頬張っていたが、皆無視して別の話になっていた。口を開いたのは風だった。

「よく考えたらキャンプではこのメンバーで皆揃っては話したりしなかったね」

次に染杏はエビカツバーガーを無理やり食い終わり、口を開いた。

「そうですね。色々大変でしたからね。真依ちゃんの事はありがとうございました」


小倉真依おぐらまいはもうこの世にいない。それは染杏が一番辛い思いをしていた。例え真依に遊ばれていたとしても、真依自信が辛い思いをしていた事を察していた。まだ真依の事を分かってあげられてない自分に怒りさえも覚えていた。染杏は今度は真依と一緒に笑顔で同じ時間を過ごそうとキャンプ場で誓っていた。もうそれは叶わない。真依が亡くなった日からは余り眠れず、真依と楽しい日々を過ごしている妄想をしていた。


「その件は俺達も出来るだけ調べている。そしたら色々分かってきた」

瑠璃はそう言うと鞄からメモ帳を取り出した。

「小倉真依。刹那高校一年十六歳。物心がつく前に両親に捨てられて祖母と一緒に暮らしていたけど、亡くなってしまい、色んな人に引き取られてしまったらしい」

続きは染杏が話し出した。

「そして色々繋がりが見えてきたんです」

「繋がり?」

風は何となくだが嫌な予感がしてきた。染杏の顔は強ばっており、瑠璃も先程とは違い真剣な面持ちをしていた。算学は一人外の景色を眺めており、話は聞いている様子だった。


「真依ちゃんの父親実は、学校の教師で、一人の生徒の事に好意を持っていたらしいんです」

その話を聞いて風は一つの事を思い出していた。それは母東城翔子とうじょうしょうこの高校生時の話である。翔子は風の父東城小正とうじょうこしょうに高校生の時、恋に落ちてしまい、遂には子供を授かった。その時翔子の担任の教師が翔子に好意を寄せていた。


「真依ちゃんの父、その好意を寄せていたのが……」

染杏は少し言いづらそうにしていたが、瑠璃が頷き染杏は恐る恐る言った。

「東城翔子さん。風さんのお母さんです」

その発言に風は驚きの余り立ち上がり、冷や汗が出始めた。さっきから外の景色を眺めていた算学も風の方へと振り向いた。続け様に瑠璃が口を開いた。


「それだけじゃない。小倉真依の母親がハンバーガー店員だった」

急に空気が変わったのを皆揃って感じた。先に口を開いたのは以外にも算学だった。

「で、会ってきたのか。その小倉真依の母さんに」

すると瑠璃はニヤリと笑い、二個目のチーズバーガーにかぶりついた。

「いや、会ってない。……やっぱり、照り焼きバーガーは堪らんなぁ」

すると瑠璃の顔めがけて風は少し本気のパンチを食らわした。


「おいてめぇ、照り焼きバーガーとチーズバーガー間違えるんじゃねぇ! チーズバーガーはチーズ入ってるんだぞ。乳製品だぞ。照り焼きバーガーにチーズ入ってますか?入ってたら、問題だぞ。名前を照り焼きチーズバーガーもしくは、チーズ照り焼きバーガーに変えればぁ?」

風は瑠璃に怒りをぶつけた後、瑠璃を蹴った。軽くとことん蹴った。見ていた染杏と算学は揃って口にした。

「怒る所違くない?」


瑠璃が目覚め、風も落ち着いた時、話は再開した。

「残念ながら何処のハンバーガーショップで働いているかは分からないんだ。」

算学はさっきから気になっていた。算学がその事を聞こうとすると、風が口を開いた。

「何処からそんなに情報が来るの? 流石に情報量多いし、怪しいルートじゃないよね?」

すると算学は再びチーズバーガーにかぶりつき、カッコつけて言った。

「言ってなかったけ、何を隠そう母さん警察の人間さ。」

風は呆れて言った。

「それただお母さんから話聞いただけでしょ。瑠璃何も努力して無くない?」


「お前ら一体何やってるんだ」

すると教室には風達の担任の教師である鳴子遠なることおいが入ってきた。どうやら今までの話は聞かれていて、ハンバーガーを持ち込んで食べている事も見られてしまった。

「帰ります! お疲れした!」

瑠璃はさっさと帰ってしまい、教室には風、算学、染杏、遠が残されてしまい、不穏な空気が広がっていた。


「全部話は聞いた。小倉の事が気になってるんだな」

三人は頷き、遠は言葉を選びながら喋り出した。

「心配してくれてありがとうな。小倉の担任の教師も亡くなる前からちょっと心配していてな。小倉のお母さんも反省している話だ」


「嘘だな。反省? 自分の子を捨てなければ良かったてか?」

口を開いたのは算学で、風も見た事ない怒りようで、ちょっと泣いているようにも見えた。

「算学落ち着け。警察の前で泣き崩れたり、直ぐにお子さんの遺体を引き取ったらしい」

が、算学はそれで怒りが鎮まる事は無く、寧ろヒートアップする一方だった。

「そんなの泣き真似だろ!! 遺体を直ぐに引き取った? だから何だよ!! アイツは取り返しがつかない事をした!! 牢獄にぶち込まれるか、神にでも罰される必要がある人間だろ!!」

風は算学の顔にビンタを食らわそうとしたが、算学の顔をビンタしたのは染杏だった。


「何でそんなに卑劣な事を言えるんですか!? それでも人間ですか!? この……この……」

段々染杏の声の強さは弱まり、染杏は教室から出ていった。

「なぁ先生、二人で話しませんか?」

算学は声に力はなく、一方の鳴子は頷き、二人は教室から出ていった。

「先に帰ってろ……風」




風は一人帰っていると、一人の少子に話しかけられた。

「あらぁ、どうしたのかなぁ?数君にでも虐められたのかなぁ?」

その少女は算学の元彼女の八乙女胡桃やおとめくるみだった。風の鼻をつつき、風の耳元で小声で

「数君って人殺しの子なんだよ、知ってたぁ?」

風はそれを聞くなりすぐ様胡桃と距離を取った。胡桃から嫌な雰囲気を感じていて変な汗が出た。

「貴方は誰ですか?」

胡桃は舌打ちすると、口を開いた。

「つまんないなぁ~すぐ私の正体知っちゃったらさぁ~ね、おばさん」

胡桃の隣にいつの間にか一人の女性がいた。風はその女性の目つきが真依に似ていた気がしていた。

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