第31話・何もない

東城風とうじょうふうは窓の手すりに脚を掛けて、深呼吸し、過去を振り返えようとなるが、無理やり過去を断ち切った。風は下を向いて意を決して飛び降りようとすると

「だから、ラブコメだっちゅーの!」

そこには風の父の東城小正とうじょうこしょうがいた。傘をさして、右には風用なのかもう一つ傘を持っていた。


「何で父さんが……」

「いやさぁ、雨降ってるじゃん。今日雨降る予定無かったじゃん。だから来たけど、娘が三階から飛び降りようとしてるじゃん。ジャンジャンジャンジャン豆板醤!」

小正はすると右ポケットから豆板醤を取り出し、自慢げに高々に挙げた。そんな小正を見て思わず風は笑ってしまった。

「帰ろうか。父さん眠いわ」




二人は車に乗り込み、家に帰る事になった。しかし、風は目覚めない三毛弥生みけやよい、弟を殺したという算学数さんがくすう、遺体となって発見された小倉真依おぐらまいの事が気になっいるのは小正が来た後も変わらなかった。

「少しは落ち着いた? やっぱり心配だよな。弥生ちゃんの事」

小正は車を運転しつつ、バックミラー越しで見て背後の席にいる風に聞いた。

「まぁね。ニュース見た?」

「ニュース? 何それ、美味しいの?」

その返答に風は目が点になってしまって、小正に大笑いされてしまった。

「ニュースがどうした? 好きな芸能人が結婚でもしちゃったか?」

「うんうん。知人が亡くなったの」

小正は急ブレーキをかけて車を止めた。


「知人が亡くなったの!? それ悲しいじゃん。……でも、何でニュースに?」

「実は、遺体となって発見されたの。自殺なのか殺されたのか分からないけど……」

「そうか……そんな大変な事になってるとは。そうか大変だったな。でも、風が思い詰める事で知人さんは帰ってこないし、知人さんもそれを望んでいるとは限らないからな」

珍しく真面目な顔で真面目な事を言った小正に違和感を感じつつも、少し風は心を落ち着かせる事が出来た。




「死んで正解だったのかもな」

そんな算学の言葉ばかり風の頭の中で何度も何度も再生された。そんな風の真横には妹の東城柚とうじょうゆずが手紙を書いていた。どうやらその手紙の宛先は真依、あの世への手紙を書いていた。

「きっとあっちの世界で楽しんでるよね。笑顔で暮らしてるよね」

風は柚の頭を優しく撫でた。

「我ながら自慢の妹め」


「よし、今日は父さんがご馳走を振舞ってやる!」

小正は普段から料理して無かったが、悪い空気を断ち切ろうと料理を開始した。

「包丁の使い方がなってないですよ。小正さん」

「何時も父さんの事小正さんって呼んでたっけ? ……って、瑠璃!?」

いつの間にか家に豊海瑠璃とようみるりがおり、小正の料理の手伝いをしていた。

「風、冷蔵庫から醤油取って」

「はいよ! ……って、何で私も巻き込むの!?」


夕食の時間となり、カツオのたたき、ポテトサラダ、トンカツ、豚しゃぶという絶対残るであろうメニューが出来た。そしてしれっと瑠璃も東城家に混ざっていた。今食べようとした時、風の母の東城翔子とうじょうしょうこが仕事から帰ってきた。

「何今日? 何かいい事あった? 瑠璃君もいるんだ。」

瑠璃は軽く会釈し、小正が口を開いた。

「今日はなんの日でもない。そう、何もない記念日だ!!」




夕食を終え、風の部屋にて風と瑠璃が夏風を感じつつ話していた。

「こう考えると風の部屋に来んの初だな。……あんま思い詰めんなよ」

それは弥生と真依の事であろう。それを察した風は外の景色を見ながら、返事をした。

「弥生は大丈夫。絶対目を覚ましてくれる。目を覚まさないと許さないんだから」

風は時間を掛けて弥生に対しては心を落ち着かせる事が出来てた。

「でも、真依ちゃんの事は分かんない事だらけで正直、彼女を救えた自信が無い」

「俺も同感だ。だから俺達もこれで終わらすんじゃなくて、色々調べて行こうと思う。それでいいな?」

瑠璃は警察に全て任せるのではなく、彼女について自分が知ろうという気持ちと彼女が抱えていた闇の部分を取り除こうという意思が強いのを風は感じていた。

「瑠璃って、世話好きだよね」

「今更気づいてくれたかよ……」

その瑠璃の言葉は少し悲しげに風は見えた。




お盆は東城家一同、風にとっては祖父にあたる隈江条くまえじょうのお墓参りに訪れ、再び風の祖母、条の妻隈江美奈子くまえみなこの家に訪れ、家族の話で盛り上がった。

そんなお盆が過ぎ、風はまた数学部の活動の為、登校した。

算学数さんがくすうとは不穏な空気のままで

「来るのか。犯罪者と一緒の同じ空気を吸いに」

特に会話する事無く、その日を終えてさっさと算学は帰ってしまった。


算学は校門を出て一人で家に帰ろうとした時

「一体何やってたんだ?」

そこには瑠璃がいて、少しニヤケづらで私服姿でいた。算学は無視して帰ろうとしたが、瑠璃に手を掴まれてしまった。

「少し話しようか」


算学と瑠璃は近くの公園に移動した。移動中は無言のままで瑠璃が先に歩いてきた。

「夏休みに学校って何かあったの?」

が、算学は無言のまま、鞄に入っていた食べずに残していたお握りを頬張った。

「そうか。言いづらい事か」

「回りくどい言い方しないで下さい」

算学はお握りを半分ほど食べるとやっと答えた。すると瑠璃は笑うとぐっと算学の隣に近寄り、真剣な顔で言った。

「俺、風の事好きだから」


瑠璃は知った。たまたま算学を見かけ、夏休みにも関わらず制服を着ていて可笑しいと思い、算学の後をつけてきた。まず算学が入った部屋の隣で様子を伺っていたが、それから直ぐに風が制服を着た状態で算学と同じ教室に入った。こっそり瑠璃は中の様子を見たが特に会話する事無く黙々と勉強をしている様子だった。そして何よりも引っかかったのは教室の中は二人きっりだった事だった。瑠璃は十分も経つことなく、学校から出て、校門前でスマホをいじりながらずっと待っていた。


「俺は徐々に風に惹かれていった。でも、風は俺を昔から嫌っていて。けど、今は風と普通に喋るし、楽しいし、余計風に対して気持ちが強くなっていった。けど、お前が現れた。そして今日見てしまった。お前と風が一緒にいる所を。お前の気持ちを聞かせて欲しい」

真剣な瑠璃を算学は始めて見た。その真剣さに免じて算学は口を開いた。

「俺は風の事……」

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