秘密結社「絶望の花束」 〜性悪美少女は男をハニートラップに嵌める〜
広田こお
第1話 衝撃の再会
秘密結社「絶望の花束」が僕を月額百万グレアの高給で雇ってくれるという。
僕は先月までは近衛騎士隊長だった。今は離婚されたが妻もいた。職と家庭を失った僕は、せめて大金持ちになって見返してやろうと思った。だが、それが良くなかった。
彼女たちのアジトは一見すると貴族の屋敷のようだった。いや、驚いた。まさしく貴族の屋敷だ。貴族が秘密結社に出資をしているということなのだろうか?混乱の中屋敷の奥の案内された部屋で僕はその少女と再会した。
「君は本当に貴族の娘だったのか?」
と僕はその少女に質問した。少女は微笑むと、
「ええ、マーリナ=ファルカシュです。武名名高いファルカシュ家の一人娘ですよ、元騎士隊長殿」
どおりで気品があるわけだ。
「なぜ、君があんな売春宿にいたんだ?どうして、僕を誘惑したんだ?」
「あなたに王国は近衛騎士隊長を辞めてもらったかったのですよ。そして、王家と血縁関係にある妻との離婚もね」
そういうことか。ひと月前、僕は出来心というか、一人の愛らしい売春婦の少女にしつこく言い寄られ、彼女を買った。そして、売春宿で一夜を過ごす中、衛兵たちに踏み込まれ御用になった。貴族の娘を無理やり手篭めにした罪に問われ、近衛騎士をクビになり離婚された。政敵の罠だとは思ったがまさか本当に貴族の娘であるとは思わなかった。
「君は僕を嵌めて、これ以上どうするつもりなんだ」
怒りを堪え僕は少女に尋ねる。
「あら?嵌めたとは聞こえが悪いでしょ。わたくし、あなたを買っているのよ?近衛騎士にしておくのはもったいない腕」
「僕は君のせいで離婚したんだぞっ」
「私が妻になってあげます。それで良くて?報酬も弾むわ?」
確かに報酬は魅力的だが、出どころの怪しい金だ。
「私ともうあの夜夫婦のちぎりを交わしたでしょ?嫌とは言わせません。表向きには私はあなたに売春宿に連れ込まれ傷物にされたことになっているのです」
彼女が本当にファルカシュ家の長女なら、それを傷物にした僕に選択肢があろうはずもなかった。くそ、良く似た偽物だと思ったのに、誤算もいいところだ。
「そう怒らないで。あなたほどの腕の騎士がいないから頼んでいるの。表向きはファルカシュ家は武門を誉にしているが、実際には裏工作を請け負っているの。女の子を使ったハニートラップでね。それに、あなたには役得があるわ。わたくし妻だけど、他の女の子とあなたが寝ても嫉妬はしなくてよ?色恋はファルカシュ家に生まれたものの宿命だもの」
彼女は恋愛ゴッコは仕事だと言った。つまり僕に愛情などカケラも感じてないということだ。
「僕はお前らとなんか寝るものか!」
悔しい。ハニートラップに嵌めることを仕事にしている秘密結社「絶望の花束」の女たちと寝ていい気がするわけない。どんなにいい女に見えても絶対断固拒否してやる。
するとマーリナは妖艶な笑みを浮かべ言った。
「私たちと寝るのも任務ですよ?特に私はあなたの妻になるのです。毎晩のように百万グレアに見合うだけの夜伽をしてもらいますよ?」
僕の体は恐怖に凍り付いていた。秘密結社の名前に絶望があるということは……。
「もし、どうしても嫌だといったら?」
かすれた声を絞り出してたずねる。
「あなたに絶望の花束を差し上げますわ」
とマーリナは無表情で言ったあと
「気持ちよくしてあげるのになぜ拒絶するのです?」
と笑った。
「それと今日から私をちゃんと気持ちよくさせられるように教育してあげますからね。」
そういうと彼女は僕の手をとる。
「なにも喋れなくなってしまったのですね。まるで童貞の男の子のよう。でも、そういうの嫌いじゃないですよ」
寝室で僕は彼女にされるがまま全身を味わい尽くされたのであった。
「今日はまず飴の味をたっぷり味あわせてあげます。この快楽を体に刻み込まれた男の子は、私に飴の味欲しさに逆らえなくなるもの。しばらくは蜜の味を楽しむといいわ。それから、少しづつ鞭を与えて私好みの男に仕上げてあげる。楽しみでしょ?」
そういうと彼女は優しく僕を抱きしめた。まるで心から僕を愛しているみたいに。
「かわいそうに。怖くて僕の男の子がねんねしたままね。今日は優しく抱いてあげるけど、ずっとこのままだったら、いつか絶望の花束をあなたに差し上げなくてはならないわ。私を失望させないでね?」
その夜僕は一晩中彼女に抱かれたが、男として何一つ反応を返すことができなかった。
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