第87話 お土産選び
動物園を一通り見て回ったマユリ一行。
今はみんなで園内のおみやげコーナーにいる。
「これかわいい。ナノハ喜ぶかな。」
「うん、まあ、いいと思うけど、ちょっとそのヌイグルミ大き過ぎない?もう少し小さい方がいいと思うんだけど・・・」
妹へのお土産を吟味するマユリ。ハルカも一緒に悩んでくれている。そこに首を突っ込む一人の少女。
「お姉さま、これはどうです?ナノハちゃんに似合いそうじゃないですか?」
一度ナノハに会ったことのあるほむらがシャシャリ出てきた。
「う~ん、確かに似合うと思うんだけど、ちょっと子供っぽ過ぎるかな。」
ほむらが選んだのはかわいい猫ちゃんの帽子なのだが、確かにこれは流石に幼すぎるだろう。
すぐに他のお土産を選び始めるほむらだったのだが、遠くからミカ達に呼び出されてしまう。
「なに?ほむほむ忙しいんだけど。」
早くナノハに似合うものを探したいほむらは、不機嫌そうに言う。しかし、ミカ達はそれを許さない。
「何でほむらちゃんがマユリ先輩の妹さんのお土産選んでるのよ。それに名前まで言ってるし・・・」
「えっ?だってほむほむ、ナノハちゃんに会ったことあるし、仲良くなったんだよ?」
!?
ほむらの台詞に一同、言葉を失う。サクラ、サラは別として、実はマユリの妹に会ったことが一度もない少女達。ほむらに一歩先を行かれたとショックを受けてしまったのだ。
「しししし、写真とかないのか?オレも見てみたいんだけど。」
ヒメノはほむらに聞く。マユリの妹の話は知っている。二年前の事件はマユリに関わるもの達にとっては、よく知られたことだったからだ。あの時は『かわいそうに』だとか『大変だったね』だとか、とにかくみんな心配したものだ。
なのでヒメノ達にしてみたら、単純に見てみたいというよりは、元気になったナノハを確認したいという気持ちもあった。
「いいよ・・・はい。」
そんなヒメノ達の気持ちを察したほむらは、こっそり携帯電話で隠し撮ったナノハの画像を見せる。そこには・・・
「スッゴくかわいい・・・それに・・・」
「・・・元気そうですわね。」
「ああ・・・よかったな。」
それぞれが少し涙目になりながら、ナノハの現在の様子を確認した。そして・・・
「よし!オレ達も妹さんのお土産選ぼうぜ!そんでプレゼントしよう!」
「いいですわね!遅くなってしまいましたが、妹様に快気祝いを差し上げましょう!」
「うん!あたしもそれがいいと思う!」
ミカ達は円陣を組む。もちろんほむらもその中に加わった。最初は抜け駆けでナノハにもっと近付こうとしていたのだが、みんなの優しい想いを汲み取ったのだ。
そして・・・
『みんなで頑張ろう!』
『オーー!』
少女達の掛け声が園内に響き渡るのだった。
・・・
動物園内のおみやげコーナーは一通り見たマユリ一行。とりあえずここではキーホルダーやクッキーを買っておしまいにした。
「マユリ先輩、ハルカ先輩。これからこの近くのデパートに行きませんか?そこならいっぱいお土産置いてありますんで。」
ミカは二人に提案する。まあミカ達としては、そこの方がナノハにあげるプレゼントの種類が豊富にあると考えたからなのだが。
「え?近くにデパートあるの?・・・うん、行きたいな。デパ地下辺りに名産品もいっぱいありそうだもんね。」
マユリはミカの提案に乗った。買ったばかりのぞうさんの帽子を被ったハルカも賛成する。
颯爽と動物園を出たマユリ達は車に乗り込むと、再びサクラの運転でデパートを目指すのであった。
20分後。
デパートに着いたマユリ達。
「じゃあここからは別々に行動しましょう。では!」
ミカはサクラを連れて、早速店内に消えていった。
「それじゃほむほむ達はこっちに行きましょ。」
ほむらもまた、サラを連れてミカとは別方向に歩いていく。
「ではワタクシ達はこちらに行きましょう。」
「ちょっ、やめろって!」
アリスは嫌がるヒメノと腕を組み、上に上がるエスカレーターを目指す。
「みんな行っちゃったね。ボクたちも行こっか。」
最後に残ったマユリとハルカは、名産品を求め一緒にデパ地下に向かったのだった。
1時間後
もう時刻は午後の5時。もうそろそろ別荘に戻って夕食の準備をしなくてはいけない。マユリはみんなに一斉メールを送る。
『もうじき夕飯時間。至急一階フリースペースに集まるべし。』
なんか淡白すぎるメールだが、効果はテキメンだった。すぐに集まってくる少女達。
「マユリ先輩!あたし何か悪いことしました?ごめんなさいごめんなさい!」
「すみませんでしたお姉さま!お待たせしました!」
「マユリさん!さーせん!」
「ワタクシとしたことがマユリ様をお待たせするなんて・・・誠に申し訳ございませんでした。」
それぞれが謝罪の言葉をのべる。この四人、常に何かやましいことでもあるのか?
「いや、謝らなくていいから・・・もう買い物済ませて帰らないと、夕食作る時間なくなっちゃうよ?」
マユリは苦笑いしながら言う。そしてあることに気が付いた。
?
みんなプレゼント用の包装してあるの持ってるけど・・・
誰にあげるんだろ?
マユリは頭に?をつける。ハルカも不思議そうな顔をしていた。が、どうせこの子達のことだから、きっとマユリにアプローチするためのものなのだろうと考える。
しかし、その予想は完全に覆されるのだった。
「あの・・・これなんですが・・・」
ミカはマユリに持っていたプレゼントを渡す。当然のことながら、マユリは突然のことに戸惑ってしまった。
「え、いや・・・え?」
何でもない日に、こんなもの受け取れるはずがない。だがミカはこう言葉を付け加えた。
「遅くなりましたが、妹さんの快気祝いとして渡していただけませんか?」
「え・・・」
マユリは目を丸くする。まさか妹のことがここで出てくるなんて。いや、それよりも・・・
他の少女達も、次々に持っていたプレゼントをマユリに渡そうとした。
「みんな・・・」
マユリの目から、自然と涙がこぼれる。みんな、ナノハのことを心配してくれていたのだ。
ハルカも、もらい泣きをしてしまった。今は元気になったナノハだが、あの頃は本当に心配したのだ。
あんなに明るく元気だった子が・・・あんなに傷だらけで・・・
今思い出すだけでも、胸が張り裂けそうになるくらい辛い。実の姉のマユリなんかは特にそうだ。あの時は、本当にこの世の終わりかのように落ち込んでしまっていたのだ。
でも・・・生きようと健気に頑張る妹の姿を見て・・・
マユリもまた再び前を向くことが出来たのだった。
「ありがとう・・・でも・・・ボクから渡すんじゃなくて、直接渡してあげてほしいな。その方があの子、喜ぶと思うから・・・」
マユリはミカ達に、妹とあってほしいと思った。ナノハにも、大好きな後輩たちと仲良くなってもらいたいのだ。
「わかりました・・・グスッ・・・是非会って渡させて下さい。」
ミカ達も泣いていた。マユリがどれ程辛い想いをしていたのか・・・その泣き顔を見て、わかってしまったのだ。何だかんだで心優しい後輩達。
・・・
別荘への帰り道、車内はナノハの話題で持ちきりだった。その流れで、マユリの持っていたナノハ画像集を見たミカ達。愛くるしい、その天使の様な姿を見て、ここにいる誰しもが身悶えしまくってしまったのは言うまでもないだろう。
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