第53話 誕生会の朝

 日曜日、朝6時。


 ミカは、窓から降り注ぐ優しい朝日で目を覚ました。とても清々しい。

 寝起きだが、早速携帯電話をチェックしてみる。すると、多くの友人知人からメッセージが届いていた。


 嬉しいな。みんなありがとう・・・


 心から喜ぶミカ。そして、日付が変わったと同時にきていた一通のメールに目を止める。


 マユリ先輩からだ・・・


『お誕生日おめでとう!今日、16歳になったミカちゃんと会えるのを楽しみにしています。これからも宜しくね。それでは、おやすみなさい。ボクのかわいい後輩のミカちゃん🖤』


 マ、マユリ先輩~~。ありがとうございますぅ・・・


 目をうるうるさせ、感動するミカ。普段早寝のマユリが、ミカの為にその時間まで起きていてくれたのだ。


 こちらこそ、末長く宜しくお願いしますぅ。て言うかもう、結婚して下さい~。


 改めて胸がときめくミカ。きっとこの想いは、永遠変わることはないだろう。

 そしてそのまま、その後届いていたハルカのメールにも目を通してみる。


『お誕生日おめでとう。これからも宜しくね。まあ、あたしの誕生日の時にもミカちゃんからこういうメール欲しかったなぁ・・・何てね。じゃあ、おやすみなさい。」


 チクリ


 胸に何かが刺さるミカ。どうやらハルカは自分の誕生日をスルーされたことを、未だ根に持っているらしい。ミカとしては知らなかったから仕方のないことなのだが。


 す、すみませんでした・・・


 と、心の中で謝ってしまう。続いて四性天から届いたメールを見てみる。

 まずはアリス。

『ミカさん、お誕生日おめでとうございます。これからも良きライバルとして、お互い切磋琢磨して参りましょう。それでは、おやすみなさい。』


 ライバルか・・・負けないからね!


 次はヒメノ。

『誕生日おめでとう。幼なじみのミカも、オレと同じ16歳か。月日が経つのが早いな。これからもちょくちょく遊びに行くからさ。そんときは宜しくな。』


 ヒメッチ、これからも仲良くしてね。


 続いてほむら。

『よっほ~。ミカミカ誕生日おっめでと~。今日のプレゼント楽しみにしててね~。スッゴいの見つけたから。かわいい市松人形なんだけど・・・まあ詳しくは渡した時に説明するね~。じゃあおやすみ~。』


 ?

 市松人形ってどんなのだっけ?

 まあいいや。ありがとうほむらちゃん。楽しみにしてるね。


 そして最後は・・・

『くふふっ。お誕生日おめでとうミカくん。ミカくんは今日どんな格好するのかなぁ。何なら私がコーディネートしてあげようか?くふふっ、16歳の誕生日に相応しい際どい格好をさせてあげたいな・・・何てね、冗談冗談。その姿は私の想像の中だけに留めておくことするよ。じゃあ、おやすみなさい。くふふっ・・・』


 うわぁ・・・

 相変わらずだね。この子は・・・

 まあ悪い子ではないんだけど・・・


 四性天最後の一人。その人物はマユリだけではなく、ミカのことも狙っていた。いや、この二人だけではない。かわいい女の子なら不特定多数、誰でも狙うのだ。四性天の中で唯一、彼女がいたことがある人物。なので他の四性天はこの人物に警戒していた。何故なら、アリスもほむらもヒメノもこの人物に一度口説かれたことがあるからだ。もちろん誰も落ちることはなかったのだが・・・

 しかし彼女は意外にも、マユリを口説いたことがなかった。いや、口説くことができないでいたのだ。あまりにも尊いからなのか。声をかけることさえ憚れはばかたのだ。

 それ故にミカと他の四性天は、彼女が動き出す前にマユリを攻略しようと必死だった。彼女のことだからミカ同様、あからさまにマユリに言い寄るだろう。いや、ミカ以上にアプローチをかけることは間違いない。


 ・・・まあそうだとしても、マユリが落ちることは無いのだが・・・


 彼女には四性天やミカの知らない、いや、当人すら知らないマユリを落とせない理由があった。そしてそれが、彼女がマユリと仕方なく距離をとらざるを得ない原因でもあったのだ。


 ミカは天井を見上げマユリの顔を思い浮かべる。


 この子にも、他の誰にもマユリ先輩は渡さないんだから!


 四性天達のメッセージで、今まで以上に気持ちを引き締めることができたミカ。

 そしてそのままの流れで、その他のメールにも丁寧に目を通す。クラスメイト達からのお祝いや応援の言葉。中学時代の同級生からも同様のメールが数多く届いていた。


 みんな、本当にありがとう。あたしはとても幸せ者だよ・・・


 16歳の誕生日の朝。ミカは多くの人の優しさに触れ、胸が熱くなり、身も心も清められた気持ちになれたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る