71話 重さ。


 71話 重さ。


 楽勝でアルテマウムル・シャドーを蹂躙したゼノリカの面々を、

 エアディスプレイで見つめていたセンは、


「……えぐいな……」


 つい、ボソっと、本音をつぶやいてしまった。

 こうなることを計算していたわけでも、予想していたわけでもなかったので、

 凶悪に強化されたゼノリカの面々を見て、普通に引いている。


 センは、ふと、『体全体』と『胸の奥』に、

 ズシリと、重さを感じた。

 だから、思わず、胸に手をあてて、



「……この『重たさ』は……あいつらの想いか……これは、しんどいな……」



 そうつぶやいたセンに、

 アルテマ・ウムルが、


「……『ゼノリカの想い』が『重たい』というのも事実だろうが、単純に、レベルが1にまで下がっているから、体が重くなっている、という理由もあるな」


 優雅に微笑みながら、そうつぶやいた。



「……お前の絶対的精神的支柱が暴走して、ゼノリカは確かに強くなった。私のシャドーごときでは、もはや、肉壁にもなれない。ただ、あいつらが、本体である私を超えているかというと、そうではない。より磨かれた将来のゼノリカならなら分からんが、今のあいつらでは、私が張った結界を超えて、貴様を助けにくることは不可能。仮に、結界を乗り越えられたとしても、あの程度の軍では、私を削り切ることはできないな」



 ゼノリカは確かに強くなったが、

 『究極超神』級の化け物をどうにかできるほどではない。


 神の力にも慣れていないし、

 単純に研鑽も足りていない。


 ゼノリカが真に強くなるのは、ここから先の話であって、

 今のゼノリカでは、まだまだこころもとない。


「結局のところ、私の相手ができるのは、センエース……貴様だけだ。しかし、そこまで弱体化してしまったら、もう、私を殺すことは出来ないだろう」


 そう言いながら、

 アルテマ・ウムルは、

 ふところから、魔カードを一枚取り出した。


「とはいえ、私も、先ほどまでの闘いで、ダメージを負いすぎた。そこのイカれた女神どもはザコじゃないからな。決死の圧力をかけられてしまうと、削り切られる可能性もなくはない――というわけで……」


 禁止魔カードの使用許可を世界に願う。

 ウムルの願いは、驚くほどあっさりと、聞き届けられた。


 アダム、シューリ、ミシャの三名は、

 『やばい』と認識すると同時、

 瞬間移動で距離を詰めて、

 ウムルが禁止魔カードを使う前に殺しきろうとしたが、


「いやいや……無理だって。『最後まで殺しあった際』に『削り切られる可能性』は認めるが、貴様らじゃ、私の『アイテム使用をとめる』なんていう、超高度な阻害行動は無理。センエースと違い、貴様らには、『アイテムを使わせない』という訓練が、圧倒的に足りていない」


 彼女たちも、センの系譜に刻まれている。

 つまり、『センエース化』することが可能。

 強大なパワーアップを果たせてはいるが、

 しかし、もともと、相当な強さを誇っている彼女たちからすれば、

 センエース化による恩恵は、プラチナスペシャルの追加による、

 『精神的な耐久性』の増加がメイン。

 総合的なパワーアップもしているが、ウムルとの距離を大幅に詰めたかというと、そうでもない。

 天下の面々が、センエース化によって受ける恩恵は、

 『1』が『1000』になるようなものだが、

 彼女たちのばあいは、

 『10000』が『11000』になったぐらいのもの。

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