59話 ゾメガ死す。


 59話 ゾメガ死す。


「情けない……が、まあ、いいさ……それだけ、ゼノリカが優秀だってこと。優秀な貴様らを殺しきるというミッションをこなせば、私の中に、一つ大きな器ができる。それは、『次』に『センエースと戦う時』の大きな武器になる」


 ウムルは、終始、ゼノリカを相手にしていない。

 ウムルの目的は、あくまでもセンエース。


 ウムルにとっては、ゼノリカなど、経験値でしかない。


「絶対に、150号を出す前には終わらせてやる……150回の敗北は、さすがに許容できない」


 そう言いながら、

 101号はゼノリカに襲い掛かった。




 ★




「さ、300号まで……出させやがって……このクソどもがぁ……」



 怒りをあらわにしながらピクついているウムル。

 もはや、余裕はどこにもない。

 もちろん、まだ、999700体以上残っているので、

 『ウムル側が全滅して敗北』というパターンはありえない。

 けれど、300号まで出してしまった時点で、

 もはや、ウムルとしては惨敗しているようなもの。


 両者の戦力差を数値だけで見れば、

 100号を出す前の段階で、間違いなく殺しきれた。

 もっと言えば、10号以内が最低ラインだった。


 しかし、ゼノリカの粘りに圧倒されて、

 結局、300号まで引きずり出された。


 ――ちなみに、現在、ゼノリカ側で残っているのはゾメガと平熱マンだけ。


 270号と戦っていた時には、すでに、五聖も九華も全滅していた。

 以降の30体は、この二人だけで対処してきた。


 あたり一面、死体の山。


 ずっと、ギリギリの闘いを続けてきて、

 もはや、二人に力は残っていない。


 300号は、ズタボロの二人を見て、


「299号は、コレに負けたのか? 信じられないな……」


 ゾメガも平熱マンも、その場にへたりこんでいて、

 呼吸することすらままならなくなっている。


 ゾメガは両手両足を失っていて、顔も半壊。

 平熱マンは、腕一本残っているが、それ以外はすべてグチャグチャ。


「……299号よ……どうやったら、これに負けるんだ……情けなさを通り越して怒りが湧いてきているぞ……」


 タメ息をつきながら、

 ウムルは、二人の元まで近づいて、



「私は、アルテマウムル・シャドー300号。ゼノリカにとどめを刺す者。そんな私に、もし、何か言いたいことがあるのであれば、聞いてやるから、話すがいい」


「……ぜぇ……はぁ……さっきの……やつも……」


「うぇ……うっ……ぐっ……おなじことを……言って……いましたね……うぅ……」


「なんだ、その目は。なぜ、そんなにもまっすぐ、私を睨みつけられる……センエースでもないくせに……」


 そんな言葉を口にする300号に、

 ゾメガは、


「……異次元……砲」


 口からのゲロビで不意打ちをかます。

 よれよれのゲロビではなく、しっかりと魔力が込められた照射だった。


 ゾメガの異次元砲をよけずにその身に受け止めたウムルは、


「その状態で、まだ、異次元砲を撃てるとはなぁ……本当に、とんでもない連中だ……」


 そう言いながら、

 300号は、

 ゾメガの頭を、


「閃拳」


 まっすぐな拳で叩き潰した。


 ゾメガの死を尻目に、

 平熱マンは、一度、ギュっと奥歯をかみしめて、


「……平熱マン……スラッシュ……」


 平の一撃は、

 ウムルの片腕を切り飛ばした。


「ぬぅ!」


 吹っ飛んだ自分の腕を見て、顔をしかめるウムル。


「その状態で……どうして、そんな一撃を放てる……」

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