44話 他人のポ〇モンはゲットできない。


 44話 他人のポ〇モンはゲットできない。


(……こいつだけならまだしも、明日はウムルで、明後日はツァールとイグ……しんどぉ……それも、一周ならともかく、これから、ずっと……マジかぁ……)


 未来を想像して、泣きたくなるセン。


「ギギギィ!」


 暴走して突撃をかましてくるロイガーに、

 センは、丁寧な呼吸でカウンターを合わせる。


 大ダメージが入るが、まだ死んでくれない。


(初期のモンハンを思い出すねぇ……無駄にHPが高くて、なかなか死なねぇ……いや、なかなか死なないのは、最新作でも同じか……俺、嫌いなんだよなぁ、倒すのに時間がかかる系の敵……)


 アウターゴッド級となったロイガーの生命力は膨大。

 それでも、




「――うらぁああああ! 深淵閃風!!」




 センが丁寧に、


「神速閃拳!」


 丁寧に、


「龍閃崩拳っっ!!!」


 凶悪な必殺技を叩き込み続けることで、

 どうにか、


「ギギ……ィイ……」


 バタリと倒れこんだロイガー。


 ようやく倒せたと理解したセンは、


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 自身も、その場にバタリと倒れこんで、


(……ぃ、いや、倒せるけど……きっつぅ……いやいや、今後、これをずっと? 毎回、毎回、このしんどさでループ? 嘘だろ? マジで言ってんのか?)


 まるで、『大学卒業後の新社会人が、勤務初日を終えた直後』のように、

 『これが、ずっと続くのか』という暗澹たる思いに押しつぶされそうになるセン。


 これまでのループも、もちろん、しんどかったのだが、

 特殊事案を除いて、後半は、『脳死作業』の連続だったので、

 心を殺すことで、どうにか、流れに乗ることができた。


(しんどい……しんどいぃ……体が重いぃぃ……)


 全力かつ全開で動き続けたことで、

 体がナマリのように重たい。


 センが、あまりのしんどさから動けずにいると、

 そこで、ロイガーの肉体が、粒子状になって、

 センの中へと注ぎ込まれていく。


(……あ、くそ、経験値になっちまった……眷属にしたかったな……)


 などと、心の中で思っていると、

 そこで、ヨグシャドーが、テレパシーで、


(やつらを貴様の眷属にすることはできない)


 などと、そんな風に声をかけてきた。


(……え、なんで?)


(他人のポ〇モンを捕獲できるか?)


(……バグを使えば、たまにできるバージョンもあるが……)


 などと、軽いノリで返しつつ、

 頭の奥で、


(……あいつらは、既に誰かの手持ちってことか……でも、トレーナーを殺して、強制的に野生へと戻せば……)


 などと考えていると、



「あんた……誰……?」



 静かな夜の中心で、

 薬宮トコが、

 センの背中に、そう声をかけた。


 心底からの疑問があふれ出た感じ。


 その問いかけに対し、センは、


「……さっき言っただろう。俺は、どこにでもいる普通の高校生だ。こんにちは」


「時間帯的には『こんばんは』が正しいにゃ! 日本語は正しく、美しく使ってほしいにゃ!」


 と、テンション高めに、そんなことをほざいてくる茶柱に、

 センは、渋い顔で、


「語尾に『にゃ』をつけているやつにだけは言われたくねぇな」


 と、華麗に切り返していく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る