43話 勝てなくはないけれど、ダルすぎてしんどい。


 43話 勝てなくはないけれど、ダルすぎてしんどい。


 ボクシングの試合では最初に互いのグローブをトンと合わせるが、

 あれと、だいたい、同じぐらいの感じの、

 ジャブというか、本当に挨拶。


 ――だったのだが、

 しかし、センから挨拶をいただいたロイガーの頭は、

 ボフッッ!!

 と、見事に炸裂して爆散した。



「……わー、死んだぁ……やっぱ、全然、強くなってねぇじゃん。何が『敵が強くなるスイッチ』だ。ふざけやがって」



 あまりにもアッサリと死亡したロイガー。



 その光景を見たトコは、

 呆けたように、口を開いて呆けるばかり。


「う、嘘……やろ……あの強大なGOOを……ワンパン……?」


 ロイガーがどれだけ強大な力を持つ化け物であるか、

 身をもって知っているトコは、

 とにかく、目の前の光景が信じられなくて、

 みっともなく動揺するしかない。


 そんなトコを尻目に、

 センは、


「これは、これで、ちょっとマズいなぁ……銀の鍵のストックにリミットがあるなら、できるだけ強い敵と戦って、効率的に経験値を稼ぎたいんだけど……」


 ぶつぶつと、自分の世界に浸っている。


 そんなセンに、最初に声をかけたのは、

 茶柱罪華だった。


「……そこの仮面の人。あなたは誰かにゃ? もしかして、神様かにゃ?」


 そんな問いかけを受けたセンは、

 茶柱に視線を向けて、


「アウターゴッド級の力をもっているのは事実だが、しかし、神様ではねぇよ。ただのどこにでもいる一般男子高校生だ。こんにちは」


 そんなセンのセリフを受けて、

 紅院が、渋い顔で、


「……セリフが錯綜しているわよ。アウターゴッド級の力を持つ時点で、一般人ではないでしょう」


「ハチャメチャな強さは手に入れたが、心と顔面偏差値はいつだって、モブのままなんだよ」


 などと、そんな、どうでもいい言葉を口にしていると、

 そこで、


「……ん?」


 ロイガーの死体が、

 ドクドクと強く脈打ちはじめた。



「……おっと、なるほど。『壊れたウムル』のパターンか。一度殺すと、強くなって復活、と」



 センが軽くジャンプをしながら、

 体の軸を整えていると、


 ロイガーの頭がグニャグニャと再生されていく。


「ブハァ……」


 軽く深呼吸をしてから、

 ギロリと、センをにらみつけるロイガー。



「……ウギ……ギギギ……ガァアアアアッッ!」



 理性ゼロな感じで奇声を上げると、

 そのまま、思考のないダイブでセンに殴り掛かってきた。


(……速ぇなっ)


 GOOの速度ではなかった。

 間違いなくアウターゴッドに匹敵する速さ。


 ギリギリのところで回避して、


「――閃拳――」


 カウンターで閃拳を決めていく。

 一応、クリティカルで入ったのだが、


「ちっ……生命力もバカ高いのかよ……処理するのに、時間と労力がかかりそうだなぁ……やだなぁ、タルいなぁ……」


 手合わせした感じ、

 『勝てない』とは思わなかった。


 かなりの『数値の暴力』を誇っている『壊れた敵』だが、

 しかし、センがその気になれば、普通に倒せるレベル。


 ただ、気を抜けば、持っていかれるため、

 高い集中力が必要になってくる。


(……こいつだけならまだしも、明日はウムルで、明後日はツァールとイグ……しんどぉ……それも、一周ならともかく、これから、ずっと……マジかぁ……)

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