6話 瞳の中の露出狂。


 6話 瞳の中の露出狂。


「「「「「いったぁああああっ!」」」」」


 この場にいる全員の全身に激痛が走った。

 すべての爪を一斉にはがされたような深い痛み。


 その痛みを受けたのは、センたちだけではなく、

 世界中のすべての人間。


 今、世界各地では、一斉に悲鳴の声が上がっている。


『痛いか? 苦しいか? しかし、こんなものではないぞ』


 そう言いながら、イブは、さらに、

 ギュウゥウウウウッっと、しぼりあげるポーズを強めた。


 その圧力に応じて、

 人類の体にかかる負荷は大きくなる。


 激痛の中で、センは、


(図虚空の精神負荷で慣れているから、俺は、どうにか耐えられるが……これ、他の連中、大丈夫か? ……いや、大丈夫じゃないっぽい……)


 頭おかしい濃厚な絶望の中で生きてきたセンは、

 『この程度』ならば、まあ、普通に耐えられるのだが、

 しかし、それは、『頭が完全に終わっているセンエース』だけの話で、

 他の面々は、みな、激痛の中で、もだえ苦しんでいる。



『貴様らの絶望は終わらない。貴様らには永遠の命を与える。永遠の時間の中で、永遠の苦しみに包まれる。それが貴様らの運命である』



 めちゃくちゃなことを口にするイブ。

 この世に存在するすべての人間が絶望の底にたたきつけられる。


 そんな中、センは、


(どうする? どうすれば、この『瞳の中の露出狂』を殺せる? 現状、テレパシーくらっているだけだから、攻撃は出来ねぇ……居場所を突き止める……と言っても、どうやって……そもそも、こいつは、地球にいるのか? 『異世界』とか『銀河の果て』とかから交信しているとか言われたらお手上げだぞ……)


 などと、必死になって、対処法を考えていると、

 そこで、イブは、


『貴様らに、一つだけ、救いを与えてやろう』


 黒い笑みを浮かべて、




『センエースに対して憎悪を抱け』




 イブの意図を即座に理解したセンは、


(……おっと……なかなか面白いことを考えるねぇ)


 軽く冷や汗を流しながら、心の中で普通にビビっていると、

 イブは続けて、



『貴様らの王であるセンエースを憎め。そうすれば、貴様らは救われる。ん? おっと、どうやら、まだセンエースが誰か知らぬ者もいるのか。……というより、現状だと、名前だけしか知らぬ者が大半で、そもそもセンエースという存在を認知していない者もちらほら。よかろう。見せてやる。もれなく、全員に』



 そう言って、イブは、指をパチンとならした。

 すると、全員の瞼(まぶた)の裏に、

 イブだけではなく、

 『センの姿』も映し出される。


『このマヌケ面のクソガキがセンエースだ。今、貴様らが苦しんでいるのは、こいつのせいと言っても過言ではない。というわけで、こいつを憎め。心から憎悪しろ。そうすれば、貴様らを蝕んでいる痛みは和らぐ』


 ――その指示を受けて、

 全世界に存在する大半の人間が、

 ためしに、センエースを憎んでみた。


 『今、自分が苦しんでいるのは、目の前にいる、このへちゃむくれのせいであり、こいつさえいなくなれば、自分は救われるのだ』――と、全力で思い込もうとする。


 すると、全身を包んでいる痛みが、スゥっと和らいだ。

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