83話 遅すぎて、逆にしんどい。


 83話 遅すぎて、逆にしんどい。


「あ、ああ……うっ……」


「ギなんとか。お前は間違いなく強かったよ。けど、やっぱり、俺の敵としては不足だな」


 そう言いながら、


「――奪い取れ」


 図虚空にギを食べさせるセン。


 何度かの咀嚼ののち、

 吐き出されたギは、デフォルメされた形状で、

 これまでの神話生物たち同様、自身の境遇を軽く嘆く。


 そんなギの意見など完全シカトのまま、

 センは、ギを装備する。


 その結果、


「さらに、一段階、パワーアップしたぜ、ひゃっほい。……つぅか、やっぱり、アウターゴッドは、質が違うな。追加で一体装備するだけでも、全体的に、ガッツリと底上げされる」


 視界が広がる。

 呼吸がしやすくなる。


 命の重みは増しているのに、体の方はグっと軽くなる。


「さて、それじゃあ、後処理をしていこうか」


 そうつぶやくと、

 センは、残りの二体に突撃を決め込んでいく。


 ヤイとザリガーの二体も、

 相当にエゲつない化け物だが、

 しかし、

 マイノグーラとギ=ホヴェルグという、

 二体のアウターゴッドを吸収&装備してしまったセンに勝てるはずがなく、


「ぐぼほぉぉっ!」

「げへぇえっ……っ!」


 あっさりとボコられる。

 もはや、手も足も出ない。


 どうあがいても勝てないと理解し、

 どうにか、センの魔の手から逃げようと頑張るザリガーに対し、


「俺に背中を見せていいことがあるとでも?」


 黒い笑みを浮かべて、

 ザリガーの後頭部にライダーキック。

 あまりの火力に、ザリガーの頭部は爆散した。


「てめぇの生命力なら、頭をつぶされたぐらいだと、まだ生きてるだろ?」


 などと、DQNなことを言いながら、

 図虚空に食べさせるセン。




「き、貴様ぁあああああ!」




 ギとザリガーの二人をやられ、

 怒りにかられたヤイの特攻を、

 センは、


「遅すぎて、逆にしんどいレベルだな」


 軽くあしらうように、

 サクっとカウンターでヤイの胸部に風穴を開ける。


「ぐ……ごほっ……」


「くらいつけ、図虚空」


 結局のところ、

 どちらも図虚空にペロリといかれた。


 もぐもぐと咀嚼。

 二体のアウターゴッドをアッサリと吸収。


 静かになった現場で独り、

 センは、感慨深そうな顔で、天を仰いで、


「……勝った……」


 ボソっと、そうつぶやいてから、

 スゥと、大きく息を吸って、




「しゃあ、おらぁああ! 勝ったぞ、ごらぁあ!」




 右手を天に掲げて勝利の雄叫びを上げるセン。


「俺、やべぇ! アウターゴッド三体に勝ったとか、やべぇ! もう、自分が怖ぇよ! どうなんってんだ! ひゃっはぁ!」


 勝利の余韻と安心感に狂気が混ざって妙なハイになっている。


 その勢いのまま、

 センは、ヤイとザリガーの二体も装備して、

 どのぐらいパワーアップできるかをチェックする。


 合計四体のアウターゴッドと、そのアウターゴッドの数値を強化できる無数のGOOを装備したセンの姿は、完全に化け物だった。



(すげぇ……とんでもない力だ……俺より強い化け物なんか、もう存在しないだろ……)



 などと、心の中でつぶやいていると、

 図虚空の中に潜むヨグシャドーが、テレパシーで、


(そうだな。貴様は随分と強くなった)


(ふふん。だろう? 『アウターゴッド×4の存在値』+『俺の戦闘力』……この状況は、もはや無敵。俺が望めば、敵は死ぬ。俺こそが最強。俺がガ〇ダムだ)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る