63話 神話生物をナメくさっていくスタイル。


 63話 神話生物をナメくさっていくスタイル。


 ナバイアの問いに対し、



「私は、神話生物の最上位。外なる神の一柱。天空に咲く美しい花。ギ=ホヴェルグ」



 たんたんと、自己紹介をするギに、

 その場にいる者、全員が顔を青くする。


「……アウターゴッド……」

「最強の神格……」

「神話狩りを! はやく、神話狩りを!」

「……バカが。ジオメトリが出現した瞬間から緊急コールは鳴らしているが……つながらない」

「次元ロックというヤツか……」


 この場にいる全員、『300人委員会が保有している魔導書』には、一応、目を通している。


 『神話生物との戦闘経験』は皆無だが、

 しかし、全員、知識だけは一丁前。


 ――そこで、ゾーヤが、

 ナバイアに、


「銃なんてしまいな。無意味だよ」


 イラついた声で、そう言うと、

 ナバイアは、


「意味がないかどうか、まだ分からない。『神話生物に通常兵器が通らない』というウワサは聞いているが、しかし、ヴァンパイアに十字架が効くように、このアウターゴッドが、『銃という概念』に対して『飛び切り耐性が低い神格』である可能性だってゼロではないだろう」


「ゼロよ。アウターゴッドはヴァンパイアのような下級の怪異じゃない。アウターゴッドに一般の物理は通じない。魔力を持たない我々が上位の神格に抗う術はない。下手に刺激して、こっちにも被害が出たら、許さないわよ」


 ゾーヤとナバイアは、どちらも無神論者だが、

 両者には、決定的に違う点がある。


 それは、神話生物を『ナメている程度』である。

 点数であらわすと、ゾーヤは10点で、ナバイアは80点。


 ゾーヤは、一応、神話生物を『映画のエイリアン』ぐらいのヤバさには捉えているが、ナバイアは、神話生物を『妙な魔法を使うでかいトラ』ぐらいにしか思っていない。


 その結果が招く結論は、勉強量の差。

 ゾーヤは、魔導書を隅から隅まで読み込んでいる。

 ナバイアは、鼻で笑いながら、かるく目を通しただけ。


 両者の間にある知識量の差が、

 現状を形成している。


「ゾーヤ。あなたの許しを請うつもりはない。私はあなたの部下ではない」


 そう言うと、ナバイアは、一歩前に踏み出して、


「私はずっと思っていた。神話生物など、ただの害獣にすぎないのではないかと。通常兵器が効かないというのも、あんたらから話を聞いただけで、実際にどうなのかは、私は知らない」


 ナバイアが神話生物対策委員会に入ったのはだいぶ後期であり、

 彼が入った時には、すでに、神話生物に対するマニュアルが確立されていた。


 どれほどの脅威で、どうすれば排除できるのか、

 その辺を、机の上で知っただけでしかない。


 ゆえに、神話生物の『強さ』に対しては、ずっと懐疑的だった。


 『携帯ドラゴンを使わなければ殺せない? 非常に嘘くさいな』

 などと考えながら、対策委員会での事務処理仕事をこなしてきた。


 とはいえ『夜の時空ヶ丘に乗り込んで、神話生物を、その目で直に確認する』――などといったアクティブをカマせるほど暇ではない。


 結果、現状が生まれる。

 無知は罪である、という現実を体現する。


「みてみろ。所詮は、単なる奇形の怪人じゃないか。武の心得なら私にもある。こうして、武器も持っている。魔法などという厄介な手品を使われると、確かに面倒だが、それ以上の恐怖は感じない。殺せるさ。殺してみせる。見ていろ」

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