60話 センエースに対する認識の度合い。
60話 センエースに対する認識の度合い。
「我が国が誇る英雄に対する非礼を、この場で正式に詫びてもらいたい」
「あまりふざけたことばかりぬかすなよ、紅院正義。私は、己の信念に従う。サイコなホラ吹き相手に謝罪などしない」
ピリつく現場を横目に、
そこで、それまで黙って資料を読み込んでいたオールドレディが、
マサヨシに対し、まっすぐな視線を向けて、
「もし、すべてが事実だったと仮定して話を進めさせてもらうけれど……コトの大きさを考えた場合、センエースは、『あなたの国が保有する戦略兵器(ヒーロー)』という扱いではなく、『全世界の共有財産』と考えるべきでないかと思うのだけれど?」
大幹部の一人、ロシアのフィクサー『ゾーヤ』は、
センエースという存在を完全に信じているわけではないが、
しかし、『嘘だったら嘘でさほど問題はない』と考えた上で、
『もし本当だったら、日本の独占は看過できない』という視点で未来を見ている。
(センエースという存在が、本物なら、世界のバランスは完全に狂う。世界中の首脳が『センエースを、人類の王と認めて、傅く』という覚悟を決めるのであれば、色々な角度から安定しうるが……世界とは、そこまで愚直ではない)
人の多様性、その恐ろしさを理解しているゾーヤは、
センエースを爆弾のようにとらえていた。
センエースが本物ならば、
今後、人類は、神話生物という宇宙的恐怖からは解放される。
しかし、『過剰すぎる力』というものは、
往々にして、
(……『その気になれば、人間の手でも殺せると判明したGOOやアウターゴッド』などより、『人の醜さ』の方がよっぽど怖い……)
ハッキリ言おう。
ここにいる大概の者は、
神話生物をナメている。
彼・彼女らの中で、神話生物は、
『携帯ドラゴンさえあれば、どうにかなる程度のもの』であり、
『対応を間違えば大惨事だが、間違えなければ処理できる困難』と、
まるで、神話生物を、『地震や津波』のような、
稀によく見る天災と同等に捉えている。
『大問題』として認識はしているものの、
実質的危機感にはまったく届いていない。
GOO大戦などで、多くの神話狩りが死んだと聞いた時は、ほんの少しだけ焦りもしたが、しかし、結局のところは、何名か生き残り、その後に沸いて出たGOOも、年端もいかない少女たちだけで普通に対処できている。
GOOの処理がどれだけ難儀なものであるか、
K5の面々がどれだけ努力し、苦悩し、傷ついているか、
そんなことなどは考えもしない。
いや、一切考えていない、というわけではないが、
しかし、とても十分と言えるほどではない。
『年端もいかない少女たちだけでGOOを対処できた』という事実だけを、
報告書の上から目でなぞり、
『所詮、ガキでも解決できる程度の問題』とタカをくくる。
何度も言うようだが、全員が全員、そうというわけではない。
紅院正義などは、自分の娘のことなので、当然、彼女たちの苦労や苦悩も理解している。
だからこそ、色々と準備をしていたり、センエースに対して配慮しようとしたりしているのである。
他にも、何名かの『臆病者』は、未来に対する不安から、センエースという希望にすがろうと考えている。
しかし、それは、やはり少数派。
ナバイアやゾーヤのように、シニカルに現実を捉えているほうが支配的。
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