29話 俺はまだ、がんばれるんだからねっ!


 29話 俺はまだ、がんばれるんだからねっ!


(少しぐらいなら、抵抗できるかも……と思っていた時期が俺にもありました。が、しかし、実際のところは、ご覧の有様……俺の人生って、ほんと、常にナイトメア・マストダイだな……)


 心の中で、愚痴ってから、

 センは、深呼吸をはさんで、


 ヨグシャドーに、弱気な視線を送りながら、


「今の実力で、あんたに対抗すべきじゃない……よくわかったよ、ヨグシャドー。けど、今の俺より強いからと言って、あまり調子に乗らない方がいい。俺は俺より強い程度の雑魚に、いつまでも負け続けるほど弱くねぇ」


 そう言いながら、

 センは、懐から銀の鍵を取り出して、


「じゃあな、神様。次はもっと強くなって、あんたの前に現れてやるよ。その時を楽しみにしておけ。次、会った時が、あんたの最後だ」


 そう宣言してから、

 銀の鍵を天に掲げ、



「――俺は、まだがんばれる!!」



 タイムリープのトリガーとなる宣言をぶっかます。


 ――けれど、


「……ん?」


 銀の鍵は作動しなかった。

 センの宣言をシカトする。

 世界は何も変わらない。

 時間はもとに戻らない。



「え、ちょ……あれ? え? あの、まだ、がんばれますけど? もしもーし! がんばりますってぇ! いきましょうよ、1002周目に! ちょっと! もーしもぉおおし!」



 困惑しているセンに、

 ヨグシャドーは、


「どうやら、私に刻まれたアリア・ギアスが、貴様の時間跳躍を拒絶しているらしい。貴様と私は、今、ここで、決着をつけないといけない運命のようだ」


「……」


 あまりにも想定外すぎる事態に、

 センは、普通に青い顔になって、


「……ぇ、これ、夢だよな? うん、夢だ。夢に決まっている。どうせ、あれだろ? 指をパチンとならしたら、世界がひび割れて、夢でしたーって、あのガングロが『うそぴょん』宣言をかましてくるんだろ? 知ってる、知ってる。俺は詳しいんだ」


「夢オチに逃げようとするその思考……ありきたりすぎて退屈だな」


「いや、退屈とか満足とか、そういう、ありきたりな感情論はどうでもいいんだよ。そんなことより、さっさと、この悪夢を終わらせてくれ。どうせ、あれだろ? 『俺は、まだまだだ』ってことを伝えるための夢だろ? てか、あんたが、噂のガングロさんだろ? わかったよ、了解、降参。身に染みて理解したよ。俺はまだまだ足りていない。1000周程度じゃ話にならない。OK。把握した。これからもっとがんばるよ。当たり前のように10000周を目指せばいいんだろ? はいはい、わかった、わかった。了解、了解。――というわけで、そろそろお開きにしよう。オメェの強さはよぉくわかった。オラはもうやめとく」


 そう言いながら、

 次元にヒビを入れさせようと、

 強めに指をパチンと鳴らす。


 もちろん、センが指を鳴らしたところで、

 何も起きやしない。


 センはうながしているだけ。

 ただ、それだけ。


「はい、ニャル! いま、いまが旬!」


 パチン、パチンと、何度も指を鳴らすセン


「はやく、ネタバラシして! おねがいだから!」


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