30話 怠慢だぞ、お前ら!!


 30話 怠慢だぞ、お前ら!!


「はい、ニャル! いま、いまが旬!」


 パチン、パチンと、何度も指を鳴らすセン


「はやく、ネタバラシして! おねがいだから!」


 必死になって懇願するが、

 しかし、世界は、いつだってセンに厳しい。


 センの指の音は、虚しく世界に溶けていくだけ。

 彼の人生に、夢オチという安易な結末は、そうそう訪れない。


 ヨグシャドーは、ズッシリとした『リアルの質量』をもって、

 センの前に立っている。


「……え、ちょっと、待って……マジで……タイムリープできない感じ? え、じゃあ、どうすんの? 『今の俺』が『あんたに勝つ』とかマジで無理なんだけど?」


「ならば、世界は終わるしかない」


 そんなヨグシャドーの宣言を受けて、

 センは、


「……っ……」


 ギリっと奥歯をかみしめる。

 折れそうなほど、強く、強く。


 頭の中がグチャグチャになる。

 心が乱れる。

 精神が居場所を見失う。

 目の前が真っ黒になりかける。


 その結果、

 センは、

 あろうことか、薬宮を睨みつけ、



「どうして、俺を止めなかったんだ!」



 華麗なる責任転嫁に着手しだす。

 最低の男である。


「あいつが召喚されたらヤバいってことは、お前ら、全員、知っていたはずだろう! なのに、どうして、必死に俺を止めて、あいつの召喚を防がなかった! 怠慢だぞ、お前ら!! これは、お前らの問題だ! 俺は悪くない!」


 ついに『ヤバいこと』を叫び出したセンに、

 薬宮が、


「何回も、あたしを殺せと言うたやろがぁあああ! ぼけかすごらぁあああああ!」


 美少女に似合わない『ガチのブチ切れ顔』で叫ぶ彼女に、

 センは、


「もっと強く言え! もっと、もっと、強く俺をたしなめろ! 『自分を最強だと信じて調子に乗っている男子高校生』に、『世の現実』をたたきつけて、根本から機能停止にさせるのは、『女子クラスメイト』の人生における『重要な役割』の一つだろうがぁあ!」


「ジブン、何言うてんねん、ごらぁああ! 頭おかしいんか!」


「まともに見えるかぁ?! もし、俺がまともに見えるなら、保険証かしてやるから、病院いってこい!」


 叫び合う二人を横目に、

 ヨグシャドーは、



「ロックオン・ワールド・オール」



 右手を天に向けながら、

 物騒なことをつぶやきだした。


 センは、慌てて、


「ちょちょちょ、そこのカッコいいオニーサン! なにをやろうとしてる?!」


「これより、すべての世界を終わらせる」


「そ、それ、ちょっとやめてみようか……イケメンのオニーサン。イケメンがそんなことをしちゃいけない。イケメンは、ただ、シニカルに微笑んでくれていればいいんだ」


「やめることは出来ない。私は、私に刻まれたアリア・ギアスに逆らえない」


「諦めるなよぉおお! あきらめたらそこで試合終了って言葉を知らんのか?! お前、アウターゴッドなんだろ?! だったら、自分の運命ぐらい、自分で切り開けよぉお! 自力の手で、その船を濃いでいけ! 他人に、オールを任せるな! 頼むからぁああ! この通りだからぁあああ!」


「大いなる力には大いなる責任が伴う。私は契約を遵守する。それこそ、私が私であるための責務」

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