27話 センエースの人生は、だいたい、いつも、こんな感じ。


 27話 センエースの人生は、だいたい、いつも、こんな感じ。


「ちょっと、そこの虹色なニーチャン。少しだけ、俺の話を聞いてくれる?」


「貴様は?」


「俺? 見ればわかるだろ? どこにでもいる普通の高校生だよ。こんにちは」


「……ずいぶんと奇怪(きっかい)な魂魄……私は、『貴様』を知っている。しかし、それは、なぜだ? 私の時空に、貴様は存在しないはずなのに。なぜ、私は、貴様を知って……いや、違うな。貴様自身を知っているのではない。『貴様の魂魄』に『寄り添っている影』に――」


「最初からずっと、あんたの言葉は理解ができねぇ。もうちょっと、わかる言葉を使ってくれねぇか? 見ての通り、俺は頭が悪いんだ。え、見るだけじゃ、頭の善し悪しなんてわからないって? そりゃそうだ。というわけで、俺の自虐を聞いてくれ。俺は非常に頭が悪い。普通に回転速度が遅いし、記憶力も普通にショボい。マジで勘弁してほしい。天才的頭脳を持つイケメンとして生まれたかったです。まる」


 と、ファントムな自虐でお茶を濁してから、


「まあ、俺の自己紹介はともかく……とりま、俺の話を聞いてくれ。あんたを召喚したのは、実質、俺なんだが、実のところ、用はない。勝手に呼び出しておいて悪いけど、帰ってくれるとありがたい。ほんと、申し訳ないね。いや、わかるんだよ? 現状の俺が、どれだけの失礼をぶっかましているか。もし、俺が、同じことをされたら、ブチ切れるからね。だから、ほんと、普通にガチで申し訳ないと思っているんだけど……ほんとうに、このままおかえりいただけると、本当にありがたい。……そんな感じなんですけど、いかがでしょ?」


「……鬱陶しいことに、今の私には『アリア・ギアス不退転の契約』が刻まれている……何もせすに帰ることはできない」


「……マジすか。ちなみに、何をしたら、お帰りいただけるんでしょう? もし、接待が必要だっていうなら、近くに、高級エステがあるので、お連れさせていただきますけど? あそこのコンシェルジュは、なかなか気合が入っている」


 『どうすれば帰ってもらえるのか?』というその問いに、

 虹色青年は、まっすぐな目で世界を見つめながら、




「過去も未来も含めた、完全なる世界の死」




「……おやおや……穏やかじゃないですね」


 内心ではバクバクになりながら、

 しかし、美少女たちの手前、

 表層には出さないよう、

 最後までカッコつけつつ、

 センは、


「ちなみに、あなたのお名前は?」



「万能なる時空の王、混沌の媒介に差す虚空の影。全にして一、一にして全なる者。つまりは真理そのもの。神々の頂点、ヨグシャドー」



「……シャドーねぇ……影と言うには、あまりにも『煌びやか』がすぎる気がするが……」



 などと言いつつ、

 センは、武を構えて、


「できたら、このまま帰ってほしいけど……どうせ、あんたの結論は変わらないんだろ? 知っているさ。あんたは止まらない。『時空ごと世界を終わらせる』……それを成すまでは、絶対に帰らない。そういう感じだろ、どうせ。――わかっているよ。俺の人生って、だいたい、いつも、そんな感じだから」


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