『最初の村周辺でレベル９９にしてみた』をマジの人生でやってみた。結果、神になった俺が、日本人を異世界に召喚してチートをあたえてみたら……

７５話 真に命をかけた死闘。

　７５話　真に命をかけた死闘。

「ゼノリカって組織はだいぶブラックだな。入りたくないねぇ。俺はブラックが大嫌いだ。まあ、『マジでアットホームなホワイト』よりは『人間関係が希薄なブラック』の方が、なんぼかマシってのが本音ではあるが」

　などと、ファントムなトークで場の空気を乱すセンに、

　アクバートは、

「強制されたことなどない」

　ピシャリと、事実のみを、端的に、

「他の連中がどう思いながら名乗っているか知らんが、私は、ただ、『己の立場を常に強く意識すること』で『自分自身の中に潜む危うさ』を律しているだけだ」

「なるほど、なるほど。封印された右腕のうずきを、長尺の自己紹介でなだめている、と。なるほど、なるほど。『邪気眼系』ですね、わかります」

　ケラケラと笑いながら、そう言い捨ててから、

「でも、まあ……ただの厨二さんってわけでもなさそうだな……」

　そこでセンは、アクバートの全身をじっとにらみ、

「お前、だいぶ強いな。えげつないほどの深みを感じる。数百年程度ではまったく足りない。お前は、今、数千、数万年を必要とする高みにいる。尊敬するぜ。その軌跡に対してだけは、心から」

「貴様もなかなかの武を纏っているじゃないか。天上に属する超人連中以外でそれだけの高みに至ったものをみたのは久しぶりだ」

　そう言いながらアクバートはゆったりと武を構えて、

「……『真に命をかけた死闘』は本当に久しぶりだ。血が沸いている」

「はは、死闘になればいいけどなぁ。てめぇがタダ者じゃないのは認めるが、俺とは比べものにならねぇ。俺の器は次元が違う」

　ニタニタと笑いながら、

　センは、挑発的な態度で、

　右手でクイクイっと手招きしつつ、

「さあ、こいよ、オッサン。この超絶最強のスーパーヒーロー様が遊んでやる」

「スーパーヒーローねぇ……」

「おやおや、なんだね、その顔は。何か言いたいがあるなら、聞こうじゃないか」

「言いたいことはいくつかあるが、どれも難しい内容だから、輩（やから）には理解できんよ」

「……いい挑発だ。グっとくるね」

　その言葉を最後に、

　両者は、空間を駆け抜けた。

　超スピードで世界をかけながら、

　次元にキズを残しつつ、

　たがいに、ジャブを打ち合っていく。

　『削り』を入れているわけでも、

　『崩し』を狙っているわけでもない。

　ただ、互いに『互い』をうかがっているだけの様子見。

　センの『様子見の一手』を見たアクバートは、

　心の中で、

（……輪郭が見えないな……）

　ボソっと、そうつぶやいた。

（ジットリとした圧力……渇いた力……なのに……）

　まるで、暗闇の中で、神経衰弱をしているような気分。

（断定はできないが……おそらく……私は負ける……）

　曖昧な雰囲気でしかモノを語れない現状。

　センの強さは、アクバートに想像できる範囲内にない。

　これだけ、不明瞭な現状でも、しかし、

　当たり前のように、立ち向かわなければいけない。

　それが、ゼノリカの天上としての立場。

（厄介な立場だ……）

　心から思う。

　今だけじゃない。

　ずっと昔から、思っていた。