74話 九華十傑の第十席、序列一位。
74話 九華十傑の第十席、序列一位。
「――そんなお前をも虫けら扱いできるぐらい……俺は強いんだ」
言いながら、センは、螺旋を描き、
ラピッドを、
「うぉおおああああああっっ!!」
美しく、背負い投げしていく。
まるで竜巻に巻き込まれたように、
抵抗するヒマなど一切なく、
ラピッドは、空を裂くように円をかいて、
ズガンと地面にたたきつけられた。
背骨がヘシ折れ、
口から大量の吐血があふれる。
しかし、ギリギリのところで、
「……ちっ……また殺せてねぇ……」
ラピッドは生き残っていた。
センの火力が足りなかったわけではない。
ただ、『オメガセン』の中にまだ残っている『センエースの部分』が、
『ラピッドの殺害』を全身全霊で拒絶した。
だから、殺せなかった。
「鬱陶しい……俺の中にこびりついた『コレ』は……あまりにウザすぎる……」
心底、ウザったそうな顔で吐き捨ててから、
「……まあ、いいや……いずれ消えるだろう。所詮は時間の問題。……俺という概念が、完璧に完成すれば、俺の心の『ウザいヤツ』も綺麗さっぱりなくなるはずだ」
天をあおぎ、
恍惚の表情を浮かべ、
「楽しみだ……完成すれば、俺は本当の自由を手に入れる。すべてのしがらみから解放された、本物の自由……ああ、楽しみだ……やっと……やっと、楽になれる……」
などと、未来を夢見ていると、
センの目の前に、
「……驚いたな……」
『武の化身』みたいな『ダンディズムの結晶』が立っていた。
ムキムキで長身。
チョイ悪オヤジの究極完全体。
スマートな品格に包まれていながら、どこか、ダーティで危うい雰囲気をかもしだすイケオジ。
そのイケオジは、酷く冷たい目で、倒れているラピッドを一瞥(いちべつ)してから、
「ラピッドを倒したのはお前か?」
そんな言葉を、センに投げかけてきた。
センは、イケオジの深部を観察しながら、
「俺以外に誰か容疑者がいるかい? いるなら教えてくれ。そいつに罪をなすり付けるから」
あえて、ヘラヘラと笑いながら返答。
その行為は、油断ではなく、威嚇。
遥かなる高みからの一手――その一つ。
そんなセンのナメ腐った態度に、
「……ふむ。腹が立つな」
直球の言葉をポツリとつぶやく。
そんなイケオジに、
今度はセンが問いかける。
「で、あんたは誰だ? まあ、『ラピッド兄さんを呼び捨てにしている』という事実と、その、にじみ出ている『圧倒的な強者感』から、ある程度、察しはつくが」
そんなセンの言葉に、
イケオジは、グっと、厳かに、胸を張って、
「栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席、序列一位、アクバート・ニジック・J・ヤクー」
その誇り高い宣言に、
センは、軽くげんなりした顔で、
「ラピッド兄さんより長い名前じゃねぇか。つぅかお前ら九華のナンタラってのは、所属している35人全員が、そのクソ長い自己紹介を、毎回やってんの? もしそれが会社の義務だとしたら、ゼノリカって組織はだいぶブラックだな。入りたくないねぇ。俺はブラックが大嫌いだ。まあ、『マジでアットホームなホワイト』よりは『人間関係が希薄なブラック』の方が、なんぼかマシってのが本音ではあるが」
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