21話 生意気な猫目の豪魔拳使い――さて、誰でしょう?


 21話 生意気な猫目の豪魔拳使い――さて、誰でしょう?


「……ナメんなよ、クソが……てめぇごときの『しょっぱい攻撃』ぐらい、ちゃんと集中すれば、余裕で避けられんだよ……まあ、避けるまでが限界で、サイズ的に、切り返しは厳しそうだが……」


 ドラゴンのサイズは、『まあまあでかいトラック』ぐらい。

 柔道技で切り返すには、少々規格外。


 『人間サイズで、十分な長さの手足がついている』という前提条件があれば、

 それなりに立ち回れるセンだが、

 宿敵であるトラックが相手となると、なかなかうまい切り返し方法が見つからない。


 もちろん、カウンターのコークスクリューで気を逆流させながら急所を砕いていくなど、いくつか攻撃方法はあるのだが、『ドラゴン』のHPと防御力を考えると、やはり、少々厳しい。


(……図虚空なしの俺じゃあ、あまりにも、素のステータスが低すぎて、適切に手段を選べねぇ……歯がゆいぜ……)


 ――と、センが『ドラゴンの駆除方法』に悩んでいると、

 そこで、右腕が淡く光った。


「……おっ」


 暖かな光により、

 失った右腕が復活し、

 痛みも綺麗になくなった。


 復活した腕をさすりながら、

 チラっと黒木の方に視線を向けてみると、

 『ほれ、見た事か、私は必要だっただろう』とでも言いたげなマウント顔で、

 ニィと笑っていやがった。


「うぜぇ顔しやがって……わかった、わかった。お前はすごいよ、天才的だよ。将来楽しみだ」


 などと言い捨ててから、

 バスタードラゴンの攻撃に集中しなおしたセン。


 ――が、ちょうど、そのタイミングで、




「――豪魔拳ランク25」




 空から降ってきた『長身の青年』の拳によって、



「グギャァアアア!!」


 ホバリングしていたバスタードラゴンの頭はゲニャリと潰された。


 命を失ったことで、当然、

 力なく落下するバスタードラゴンの死体。


 そんなバスタードラゴンの首を掴みとりつつ、

 地上に降りてきた『長身の青年』は、


「おかしいな……なんで、こんなところに、突然、上位の龍が沸いたんだ……?」


 首をかしげながら、


「誰かの手によって召喚されたとしか考えられないが……周囲に、それらしき使い手の気配はなし……んー……よくわからないな……この件は、『百済』に丸投げでいいか」


 などとつぶやきつつ、

 ドラゴンの死体を、

 『自身が生成した亜空間』に放り込むと、

 センたちに視線を向けて、


「そこの民間人二名……どっか、ケガしているか? していないな? 出来れば、していないと言ってくれ、対処するのが面倒だから」


 と、たずねてきた。

 『見下されているの』というのが、ハッキリと伝わる、

 非常に、ぶっきらぼうな上から目線の態度。


 『優しさで尋ねている』のではなく、

 『義務として尋ねているだけ』なのが丸わかりの粗野なムーブ。


 ネコ科系の釣り目で、いかにも気位が高そうな感じの、二十歳そこそこっぽく見える青年。


「……ま、ケガ……したんだけれども……でも、まあ……メディック担当が将来有望の天才的な人気者だったから、結果的にはノーダメだったかなぁ……」

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