103話 第一回っ!! チキチキ! 水泳対決ぅ~っ!

 103話 第一回っ!! チキチキ! 水泳対決ぅ~っ!


 サウナを出たセンは、水風呂を一発かましたあと、

 軽く体をうごかしたくなったので、 

 奥に設置されている温水プールに向かった。


 本来であれば、5分ほどベンチに腰かけて、

 外気浴に浸ることで、自律神経を整わせるところだが、

 色々ありすぎたせいで、

 のんびり、そのステップに浸ることは出来そうになかった。


(でけぇプールだなぁ……)


 長さ50メートル、幅10メートル、深さ5メートルのしっかりとしたプール。

 非常に清潔で、張られている水も、ピカピカと光を放っている。


(全部に、ちゃんと金をかけている……初期投資はもちろん、整備にも、掃除にも……)


 心の中で、この店の『ありよう』に対して称賛を送りつつ、

 ザブンと、一気に、肩まで浸水。


 頭の中をカラにしようと、

 大胆なクロールで、水をかきわけていると、

 そこで、人の近づいてくる気配を感じた。


 もはや、ある程度の予想ができていたので、

 特に驚くこともなく、

 むしろ、


「……『第一回チキチキ水泳対決をしよう』なんて言い出さないだろうな」


 食い気味に、そうかましてみせるセン。


 そんなセンに、

 『彼女』は、


「負けた方が勝った方と結婚するというのはどう?」


 などと、だいぶ『ふざけたこと』を口にした。


 センは、呆れ顔を見せて、


「……勝っても負けても結果が同じだな」


「あら、バレた?」


 シレっとそんなことを言う、水着姿のミレー。


 スラっとした長身ボディに、

 『ハンパなく足が長く見えるハイレグの競泳水着』をあわせているので、

 現状の『彼女の足の長さ』は、

 体感だと、余裕で2メートルをこえている。



「俺が勝ったら、300人委員会を含むお前ら全員に、『間接的な意味も含めた完全接近禁止命令を出せる』というのはどうだ?」



 その提案に対し、

 ミレーは、コクリと頷き、


「前向きに善処する方向で検討するわ」


 と、非常に『ポジティブ』かつ『アクティブ』な答えで返した。


「お前ら親子は、『俺の要求に応えたら死ぬ病気』にでもかかってんのか?」


 タメ息をつきながら、

 『やれやれ』と言った感じで首を横に振るセン。


 そんなセンに、ミレーは、


「私が負けることはありえないから、あなたが勝った場合を考える必要はないわ」


 と、

 挑発的な言葉を投げかける。


「言うじゃないか、お嬢ちゃん」


 センは、鼻で笑いながら、


「ちなみに、お前は、勝利した時、俺に何を要求するつもりでいる?」


「なにも。私が勝つのはただの必然。必然に報酬を求めるほど、私は、あさましくはないわ」


「……上等じゃないか」


 センはそう言うと、

 盛大に見栄を切って、



「ルールは、チャージ3回。ノーエントリー。フリーオプションバトルでいいな」



「……はぁ?」


「気にするな、ただのテンプレだ」


 そう言いながら、

 軽くストレッチをしつつ、

 壁際に立つと、


「フリースタイルで端から端まで泳いで、先についた方が勝つ一発勝負。負けた方は勝った方にジュースをおごる。それでいいな?」


「まって。おごるのは何本? 5000万本? それとも、1億本?」


「俺は、業者じゃねぇんだよ」

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