65話 情報無双といこう。

 65話 情報無双といこう。


「……あなたは、何者ですか?」


「5日後の22日から、タイムリープしてきた者だ、こんにちは」


「……」


 そこで、黒木は、コーヒーで間をおいてから、


「……タイムリープ……ですか……それは……『記憶の時間移動を果たした』という意味であっていますか?」


「ああ」


「……そのマジックアイテムの力で……ですか?」


「いや、別のアイテムを使った」


 そこで、センは、

 丁寧に、図虚空と、銀のカギについて解説した。


 センの拙い説明でも、

 黒木の頭脳があれば、

 問題なく理解できた。


 センは続けて、22日までに起こることを、

 ザっと説明していく。


 これから何が起こり、

 どうヤバいか、

 それを、シッカリと伝えていく。


「なるほど……」


 黒木は、そうつぶやいてから、


「今、この瞬間に、すべてを完璧に信じる……というのは難しいですが、しかし、あなたの話が全て事実だった場合……」


「今は信じなくていい。今日の夜、ロイガーが召喚されて、お前らは苦戦する。そのロイガーを、俺が、瞬殺するところを目の当たりにしてから、あらためて、信じればいい」


「……」


「今日の夜以降、もしかしたら、お前は、『センエースが自らロイガーを召喚したのでは?』という疑問を抱くかもしれない。その時はこう思え。『仮に、俺の自演だったとしても、お前らが苦戦したロイガーを、俺が瞬殺できる事実に変わりはない』と」


「……そうですね。仮に、あなたが『私たちが束になっても敵わない相手を瞬殺できるほどの力』を持っていた場合……何をどうしようと、対抗なんてできない……『盲目にあなたの話を信じておく方』が、精神安定的にはもちろん、実質的にも合理的な気がしますね」


 そこで、黒木は、ハンカチを取り出して、

 額に浮かんだ汗をぬぐう。


 表情は一貫してクールなままだが、

 内心では、それなりにバクバクしている。

 自律神経に理性は通じない。

 心と体は、なかなか、自由になってくれない。


「あなたの話は、だいたい理解できました。それで? 私にどうしろと?」


 そこから、センは、

 『僕と契約して~』の流れを踏襲した。


 あらかたの説明を聞いた黒木は、


「一つ聞いていいですか?」


「なんだ?」


「誰よりも先に、まず、私にコンタクトをとった理由はなんですか?」


「K5の中で、お前が一番マシだから」


 そう言い切った上で、

 さらに、センは、


「というか、他のヤツがヤバすぎる」


 と、純粋な本音をつけたした。





 ★






 ――学校でのイベントに変化はなかった。

 班決めが行われ、

 ジャンケンで、トコが代表になり、

 そして、


「お前が閃壱番(せんいちばん)だな?」



 例の佐田倉イベントがはじまった。


 この時、センは、

 これまでとは違い、


「……はい、そうです」


 と、歯向かうことなく相手に話をあわせていく。


 スムーズに事を運び、

 佐田倉から、


「とりあえず、当日は休め」


 と命じられたさいも、


「了解でーす、それでは~」


 と、そう言って、

 素直に帰ろうとしたのだが、

 しかし、そこで、

 佐田倉が、


「いや、待て、待て」


「なんすか? 用件はもう終わったでしょ?」


「呑み込みがよすぎて、気持ちが悪い。俺の言葉を、ちゃんと理解しているのかどうか不安だ」

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