64話 強くて3週目、スタート。

 64話 強くて3週目、スタート。


 もう一本の銀のカギを手に取り、

 じっくりと観察すると、


「……存在感が増している……リミットゲージが回復した……とみて、間違いないかな?」


 そう口にすると、図虚空が、


「ああ、間違いない」


「いつリミットが切れるか、詳細、わかるか?」


「同じだな。22日の23:59」


「……減っていないか……助かった」


 ホっとしつつ、センは、


「まだ、試行回数はたったの2回だから、確定ではないが……おそらく、銀のカギは、22日の23:59がリミットで、使用すると、17日に飛べる……活動できる時間は、全部で6日」


 ボソっとつぶやいてから、

 袋の中を探してみる。

 が、もう、何も入っていない。


「持ちこせていない……ということは……やっぱり、あの黒い結晶……マジックアイテムではなく、ただの石だったか……まぎらわしい色味しやがって……」


 校舎の屋上で見つけた『黒い結晶』も、

 銀のカギと一緒に、袋の中に入れて、

 持ちこせるかどうか実験してみたのだが、

 見事に消失していた。



「……まあ、あんな用途不明な石がどうなろうが、どうでもいいけどな。銀のカギと図虚空さえあれば全然十分……」



 などとつぶやいていると、

 そこで、スマホが鳴った。


 電話をかけてきた相手はカズナ。




「……陛下、今回の初手は、どうなさいますか?」




「まず、黒木と交渉したい。今すぐだ。段取りをつけてくれ」


「おおせのままに」






 ★






 ――45分後、

 『黒木愛美』は、例の喫茶店のドアを開けた。


 喫茶店に入り、

 センの顔を見ると、

 黒木は、


「……あなたは確か、ウチのクラスの……えっと……確か……反町さん……でしたっけ?」


 その発言を受けて、センは、


(班決めのイベントを経ていないと、俺の存在は正式に認識されていない……か)


 心の中で、そうつぶやいてから、


「クラスメイトの閃壱番です。はじめまして」


「……もうしわけありません。クラスメイトの男子の名前には一ミリも興味がないもので」


 さほど『申し訳ない』とは思っていなさそうな『非常にフラット』な表情でそう言いながら、黒木は、センのトイメンに腰を落とす。


「最初に、うかがいたいのですが、カズナさんとは、どういうご関係で?」


「何度も地獄を経験した仲だ」


「……よくわかりませんね」


 怪訝な顔でそうつぶやく黒木。


 ――と、そこで、奥からマスターが出てきて、

 黒木の前にコーヒーを置いた。


「すいません、ありがとうございます」


 頭を下げる黒木に、

 会釈を一つはさんで、奥へと消えるマスター。


 黒木は、一口すすってから、


「……それで? 私になんの用ですか?」


 その質問に対し、

 センは、


「図虚空、こい」


 彼女の目の前で、右手にナイフを召喚するという行為で応えた。


 その様を目の当たりにした黒木の瞳孔が、ググっと開く。

 『シッカリとした驚愕』を、持ち前の理性と冷静さで抑え込み、


「……それは……マジックアイテム……ですね……」


「ああ、人間の科学力じゃ、物体を瞬間移動させるのは、まだ不可能だ」


「……あなたは、何者ですか?」


「5日後の22日から、タイムリープしてきた者だ、こんにちは」


「……」


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