54話 不可避の絶望。
54話 不可避の絶望。
(俺のせいっちゃ……俺のせいか……)
センは、自分を責めるタイプではないが、
こういう問題に直面したさいに、
『目をそらす』ことも、また出来なかったりする。
(放っておくのは、単純に、気分が悪いしな……出来る限り、やれることをする……とりあえず、蘇生方法を探すのがメインだが……もし、銀のカギを見つけたら……どうする……)
そこで、センは悩む。
タイムリープをするべきか否か。
(……不用意なタイムリープで、変に時空が歪んで、また、人類滅亡の世界線に入ったら……そういう可能性だってゼロではないんだ……偶然にも『初回のタイムリープで、運よくシュタ〇ンズゲート世界線に入れた。だから、人類は滅亡しなかった』……その可能性がある以上、安易にタイムリープには頼れない……)
色々と悩み、考えた結果、
(……とりあえず、今、手元に何もない状態で未来を計算しても、皮算用からは抜けられねぇ……いったん、眠ろう……今日まで、ずっと、人類滅亡のことばかり考えていたから、まともに休息がとれなかった……さすがに……いろいろと、限界……)
反町が銃殺された、
という大問題は残っているが、
『人類滅亡』というルートからはどうにか抜け出すことができた。
その安堵から、
センは、泥のように眠った。
★
――翌朝、
ドォオオンッ!
という爆発音で、センは目を覚ました。
「……なんだ、なんだ……」
あわててベッドから起き上がり、
窓の外を見てみると、
「……っ……」
向かいの通りに、首から上がなくなっている死体が、何体か転がっていて、
あちこちから、モクモクと煙が上がっていた。
「……」
つい呆然としてしまうセン。
頭が白くなって、
同時に、胸の中に、
憤怒とか、焦燥感とか、絶望感とか、
色々な負の感情が、グルグルとないまぜになって、
センの陰影をグツグツと煮込んでいく。
「……くそったれが……」
歯噛みしながらつぶやくと、
そこで、センは、
『一台のバイクが、こちらに向かっていること』に気づいた。
ヘルメットをしていないので、
搭乗者が『久剣一那』であるとすぐに理解できた。
★
駆けつけたカズナを、
とりあえず、自分の部屋に上げたセン。
お茶も出さずに、開口一番、
「全員、死んだ感じ?」
出来るだけ冷静に、そう尋ねると、
「……はい、おそらく」
「ちなみに、いつ、剣翼が舞ったか……具体的な時間は分かるか?」
「申し訳ありません。睡眠中にことが起きたようで、くわしいことは、なにも……申し訳ありません」
「謝るなよ。俺も、さっきまで、バキバキ睡眠中だった」
そこでセンは、力なく、壁にもたれかかり、
「というか、おそらく、俺らが寝ている時を狙ったんだろう」
体の力は抜けているが、
頭の方はフルで回転している。
寝起きとは思えないほどの高速回転。
「まだ何も確定しちゃいないが……しかし、前提を踏まえた上での暫定結論をひねり出すと……おそらく、紅院たちを見張っていても無意味だ。首魁は、確実に『俺が、あいつらを守れないタイミング』を狙っている。根本をつぶさない限り、この地獄はおわらねぇ」
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