55話 黒い結晶。

 55話 黒い結晶。


「首魁は、確実に『俺が、あいつらを守れないタイミング』を狙っている。根本をつぶさない限り、この地獄はおわらねぇ」


 24時間365日、ずっと神経を張り巡らせることが可能なら、

 『茶柱と黒木を守ること』だけは、どうにか出来るかもしれない。


 だが、センが人間である以上、それは不可能。


(不眠不休で活動できるアイテムがあれば……携帯ドラゴンなんていう『無茶なアイテム』が実在するんだから、『寝食不要でも生きていけるアイテム』ぐらいなら、あっても別におかしくはねぇ……茶柱が言っていた『寿命の半分で願いを叶えてくれるニャル様』なんてものが、ガチで実在するのだとしたら、それに、人体改造を頼んでみるというのもアリ……)


 考えていると、

 そこで、カズナが、


「……陛下……ここから……どうしますか?」


「まずは、学校で、銀のカギを探す。見つからなかったら、その時、また考える。とにもかくにも、銀のカギだ。あれがないと、話にならない」


「私は……どうすれば?」


「手伝え。人海戦術だ。とにかく、全力でしらみつぶしをする」






 ★






 それから一日中、

 センは、学校で、銀のカギを探した。


 しかし、見つからない。

 何もない。


(……『図虚空だけが、ぶっ飛びの超特別』で『他のアイテムは、確定で携帯ドラゴンが必要』……それが絶対的前提条件だとすると……劇的にヤベぇ……完全に詰み……)


 焦燥感と不安が津波のように押し寄せる。

 だが、センは、奥歯をかみしめて、


(……折れるな……考え続けろ……抗い続けろ……)


 必死に自分を奮い立たせていく。


 カズナと二人で、

 学校中を、くまなく、

 探して、探して、探して、


 そして、次の日を迎え、


「……見つからねぇ……」


 それでも、何も進展なし。


 終わった世界で、たった二人、

 存在するかどうかもわからないモノを探し続けるという地獄。


 そんな地獄の中、

 センは、

 とある校舎の屋上で、


「……ん?」


 何か、『黒い結晶』のようなものを見つけた。

 卵サイズで、微妙に発光している謎の結晶。

 光に照らすと、角度によって、

 緑っぽくなったり、赤っぽくなったり、金っぽくなったりする。


「……これは……マジックアイテム……か? ……いや、変な色した普通の石? ……微妙だな……アレキサンドライト……なワケねぇよぁ……」


 そこで、センは、


「……図虚空」


 自分の武器を召喚し、問いかける。


「この黒い結晶……何かわかるか?」


「無知なやつだな、まったく、やれやれ。いいか、セン、それは、黒い結晶だ。サイズは卵型で、重さは200グラムほど。缶コーヒーと同じぐらいだな」


「俺の知らない情報を頼む」


「そんなものは取り扱っていない」


「……くそが……」


 吐き捨ててから、

 センは、

 黒い結晶を、矯(た)めつ眇(すが)めつ見てから、


「……ま、一応」


 そうつぶやきながら、ポケットにしまい、


「……ふぅ……」


 ため息をつきながら、

 その場にドカっと座り込む。

 大の字になって、


「……しんどー、ありゃ盗めねぇわ」


「いつどこで誰の何を盗むつもりだったんだ?」


「気にするな……完全に無意味なテンプレ。頭が疲れている時、まれによく出てくる戯言の中の戯言だ」


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