54話 トラップカードをセット。

 54話 トラップカードをセット。


 センは、ギラつく目で、


「まっすぐの殴り合いなら、正面から受け止めてやらないでもないが、無粋なチートを使うつもりだってんなら、容赦なく、徹底して、叩き潰す。それが出来る程度には鍛えてきたつもりだ」


 オメガの一挙手一投足を監視しつつ、


「もし、お前が、ちょっとでも、ほんのわずかでも、『おかしなマネ』をしようとしたら、その時点で、迷わず、首から上を吹っ飛ばす。いや、念のために、全身を粉砕しておくか。まあ、とにもかくにも、絶対に、禁止魔カードは使わせない」


 警戒心MAXで、たんたんと、


「できれば、あの『禁止魔カード』とかいう『ふざけたチート』を真っ向から叩き潰したいところなんだが……しかし、アレが『どういうシステム』なのか、まったくわからんから、現状だと『根本の対処』はしようがない。というわけで、あの日から、今日まで、毎日、毎日、かならず、最低3時間以上を確保して、唯一の対処方法である『使われる前に殺す』という訓練を積んできた」


 もちろん、『それのみをする時間』ではなかった。

 センは『非効率な訓練』を嫌う。

 センの視点における『非効率』とは、

 ――『一石二鳥』を下回るという事。

 二つ以上のメリットが得られる行動以外は取りたくないというワガママ。


 2000万匹のスライムを殴りつづけるという鍛錬は、

 一見、非効率に思えるし、

 一般人視点で言えば完全に非効率だが、

 センの視点ではそうではない。


 『一人』で『安全』に『閃拳を磨くこと』が出来て、

 かつ『少ないながらも経験値を獲得すること』が出来る、

 という明確な利があった。


 実のところ、センは、セン視点での『効率』を常に求めている。

 よって、対『禁止魔カード』訓練でも、

 徹底的に『セン視点での効率』を求めた。


 その結果と言い切るのは、少し言い過ぎだが、

 『センの能力が底上げされた』のには、

 そういった観点でのブーストもあったから。


「俺の前で、魔カードを使うのは、至難の業だと心得ておけ」


 などと、そんなことをいうセンに対し、

 オメガは、

 冷静に、

 ――というか、

 極端なほど冷徹に、






「これまでの言動からわかっていると思うが、センエース……俺は、お前について、少しだけ詳しい。これまでの経緯はもちろん、趣味や嗜好も、あらかた把握している。だから、お前が、強く『禁止魔カード』を警戒していることも知っていた」






 ニっと黒く笑って、


「だから、敷かせてもらった。万全の態勢を。決して抗えない絶望を」


「……それは、どういう――」


「――至極単純な話。お前が『ここにくるよりも前の段階』で『カウンタータイプの禁止魔カード』を伏せておいた」


「……」


「発動条件が、かなり難しい類の禁止魔カードだったから、うまく決められるか、少し不安だったが……杞憂だった。現状、問題なく発動させることができる。ちなみに『今から止める』のは不可能だ。複雑な手順は一切必要ないからな。お前から、一切、注意をそらすことなく発動させられる」


「戦闘前から伏せておける禁止魔カード……さすがに、それは、酷すぎるだろ……どうあがいても、対処できねぇじゃねぇか」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る