20話 正式に終わっている外道。

 20話 正式に終わっている外道。


「……特に理由もなく、面白そうだからという理由だけで、部下の娘を、目の前で犯したあと、ミンチにして、食べさせた……もう何言っているか、わかんねぇな……」


「なんの罪もない三歳の幼女を、享楽で凌辱し、すりつぶし、その肉片を、父親に食べさせた……と、そういうことです」


「……詳しく説明しなくていいよ、ミシャさん。こういうの聞くと、普通にヘコむから、聞きたくないんだよね、基本」


「その手の非道な行いが『明確な証拠の残っているもの』だけで、これだけの数、行われているようです」


 そう言いながら、ミシャは、

 センの目の前に、

 ドカっと資料の束を置いた。


 センは、その資料の中から、

 テキトーに一枚を選んで目を通す。


「……ヤベェな、あいつ……正式に終わってんな……なんで、こういうことが出来るのかな……マジで意味がわかんねぇわ。こういうサイコなヤツって、たまにいるけど、ほんと、なんでなんだろうな……」


 と、センが、深いため息と共に、そうつぶやいた時、



「クリミア様!!」



 一人の中年男性が、カフェテリアに駆け込んできて、

 罪帝クリミアの足元で、土下座をしながら、


「どうか! どうか、慈悲を!」


「しつこいな、バスルス……」


「どうか、娘だけは! 私は何でもいたします! どうなってもかまいません! ですので、どうか!! どうかぁ!!!」


「貴様はミスをした。本来であれば、一族郎党皆殺しだが、貴様は、私の部下の中では、まだマシな方だから、娘を壊すだけで許してやろうと言っている……そんな私の温情を無碍にするとは、貴様、どういうつもりだ」


「クリミア様! 私の罪は私が背負います! どうか、私に! 私だけに!」


「きわめて不愉快だ」


 そう言うと、クリミアは、

 バスルスの眼球に手を伸ばして、

 なんの躊躇もなく、

 当たり前のように、

 ブチリッっと、

 ひねり取った。


「ぎゃぁああああ!!」


 激痛に暴れまわるバスルスを、

 さらに踏みつけながら、


「これまで、貴様は、それなりに、私に尽くしてくれた。だからこそ、せめてもの慈悲として、娘を苦痛なく殺すだけで許してやろうとした……そんな私の、大いなる慈悲を、貴様は……貴様はぁああ!!」


 激昂したクリミアは、

 アイテムボックスからナイフを取り出して、


「もういい! 貴様も死ねぇえええ!!」


 ヒステリー気味に叫びながら、

 そのナイフを振り下ろした――


 と、その瞬間、




「――んっ?!」




 クリミアの目の前から、バスルスが消えてしまった。


 正確に言うなら、

 クリミアが、バスルスの前から消えたのだが。


(……これは……空間魔法……)


 クズではあっても、無能ではないので、

 すぐさま、冷静に、自身の状況を察する。


(どこのバカだ……この私を魔法で拘束するとは)


 心の中でつぶやきつつ、

 周囲に視線を向けるクリミア。


 ここは、真っ白な空間だった。

 体育館くらいのサイズの、何もない空間。


 だから、すぐに気づいた。


 自身の背後に立っている男の姿。



「……さっきのカスか」



「どうも、さっきのカスです」



 そう言って、神の王は、優雅にお辞儀をした。


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