59話 まだまだガキ。
59話 まだまだガキ。
(おそらくだけれど、このガキは『最近、各地で起こっている奇妙な事件』の関係者……)
理解に届くと、普通に不愉快になってくる。
(やりたいことはよくわかった。全宮家の視点で言えば、それが非常に大事なことだってこともよくわかる……けど、この状況は『便利に使われている』って感じがして……ウザったいな……)
心が冷たくなってくる。
『サイコパス』の部分がザワザワする。
(ザコーなら、こういう依頼を受けた段階で、相手の意図に気づいて、事前に、きっちり、カウンターをかましておいてくれる。『ナメんじゃねぇぞ』と一言、言っておいてくれる。こっちが仕事しやすいよう、色々と慮ってくれる。……けど、ブラツクーロはバカだから、そういう、『私たちに対する気配り』が出来ない。そういうところなんだよなぁ……だから、あいつの命令は、聞く気がおきない)
速度が上がっていく戦闘。
アモンは、徐々にギアをいれていく。
アクセルをふかしすぎないように、
じんわりと、熱と回転数を上げていく。
それに引きずられるようにして、
チャバスチャンのリズムも上がっていく。
テンポが上がってきて、
次第に、『ついていく』のに必死になってくる。
チャバスチャンは思う。
(……強い……底が見えない……骨太の芯を感じる、このでたらめな強さ……)
必死になって、
アモンの速度についていく。
しかし、徐々に引き離されていく。
「ゴキのチャバスチャン。ただのイカれた殺人鬼かと思ったら、意外に、動けるね。ここまでついてくるとは思っていなかったよ」
「……お褒めにあずかり光栄です」
「それだけの土台を得るまでには、それなりにまっすぐな努力を積んできたはず。なのに、どうして、ゴキなんていう、頭のおかしい反社組織でくすぶっているのか、普通に疑問だよ」
チャバスチャンの気持ちが、
アモンにはサッパリわからない。
才能があって、努力も出来るのであれば、
普通に表舞台で生きればいいのに、
と、実直な感想を胸に抱く。
そんな、『命が有する穢れの深さ』に関して、
『真の意味での理解』が足りていないアモンに、
チャバスチャンは、苦笑して、
「ま、人それぞれってことですよ」
と、中身のない言葉でお茶をにごす。
言いたいことは、いくつか頭の中に浮かんできたが、
しかし、ガキ相手に、それを口にしたところで、
なんの意味もないということくらい、
20年以上生きていれば、さすがに分かる。
※ 第2~第9アルファにも、
『道理に合わないサイコパス』は存在する。
『そういう連中』を処理するのも楽連の仕事の一つ。
しかし、その手の『繊細な処理』を任されるほど、
アモンは、まだ人間力的に、
ゼノリカから認められてはいない。
一言で言えば、いくら才能があって強かろうが、
アモンは、まだまだ10歳のガキだという話。
「ところで、そろそろ終わりにしません? ちょっと疲れてきました。運動するのは嫌いなんですよね」
「まだ、ウォーミングアップすら始まっていないのに、なに言ってんだよ」
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