58話 お互いの評価。

 58話 お互いの評価。


「昔話に花を咲かせているところ、悪いんだけど、そろそろ、はじめない? 僕、ヒマじゃないんだよね」


「やるのは構いませんよ。ただ先ほどの約束だけは守ってくださいね。私は、あなたを殺せそうだったら、躊躇なく殺しにかかりますが、しかし、それでも、あなたは、絶対に私に殺意を向けない事。いいですね?」


「ほんと、めちゃくちゃだな、あんた」


「自覚はありますよ。私は正気ではありません。なんせ、ゴキのメンバーですからね。まともなはずがありません。ただ、今回の場合、そちらからの要請を受けて戦っている状態なので、ある程度は、こちらの要求を呑んでもらわないと」


「……ま、別にいいけどね。あんた程度じゃ、絶対に僕は殺せないから。圧倒的実力差のハンデとして、その要求を呑んであげるよ」


 挑発をからめるが、


「感謝します」


 ニコっと笑顔で返されてしまう。


 ――そして、静かに、二人の闘いが始まった。

 アモンは、試験時と同じように、

 魔力とオーラを縛った体技のみの状態で、

 チャバスチャンと戦う。


 開始そうそう、

 『綺麗に手を抜かれている』、

 という事に気づいたチャバスチャンが、


「体技のみで私と戦うおつもりですか?」


 そう尋ねると、


「魔法を使ったら、ついウッカリ殺してしまいそうだからね」


 またもや、挑発していくが、


「丁寧なご配慮、感謝いたします。戦いやすくて、非常にありがたい」


 サラリとかわしていく。


 互いに、体技をかわしあう中で、

 アモンは、心の中で、


(ゴキのチャバスチャン……まあ、強いかな……ゴミスと同じくらい。土台がシッカリとしている。そこらの一般人だと、相手にならない卓越した強さ。非常に優れた才覚を感じる。死ぬ気で頑張れば、楽連に上がることも出来そうなレベル……)


 そう評する。

 かなりの高評価。


 そんな評価を受けているチャバスチャンは、

 心の中で、


(このガキ……尋常じゃないな……この幼さで、この強さ……ヤバいな)


 アモンの強さに対して、普通に引いていた。


(身のこなしから『そうとう出来る』とは思っていたけれど、ここまでとは思わなかった……このガキ……おそらく、ザコーより強い……)


 アモンが、正式に、どのぐらい強いか、

 その辺を数値で明確にすることは出来ないが、

 チャバスチャンは、それなりに『強者』の部類に入るので、

 ある程度『アモンの強さをはかること』が出来た。


 だから、


(こんなガキがいるなんて話は聞いたことがない。これほどの強さがあって、なんの噂も聞いたことがないなんてありえない……なるほど、だからか……)


 気付く。


 ルルの意図。

 今回の龍委ロケハンの目的。


(このガキの底をはからせることと、ゴキとの情報共有……おそらくだけれど、このガキは『最近、各地で起こっている奇妙な事件』の関係者……)


 理解に届くと、

 普通に不愉快になってくる。


(やりたいことはよくわかった。全宮家の視点で言えば、それが非常に大事なことだってこともよくわかる……けど、この状況は『便利に使われている』って感じがして……ウザったいな……)



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