51話 パンパカパーン!

 51話 パンパカパーン!


「カス以下の低級モンスター風情が、この私を相手に、何をしようというのかね」


 セイバーリッチ・プチは、召喚獣の猛攻をモノともせず、

 聖剣とデスサイズで、

 ――バサバサァッッ!!

 と、三体のモンスターを、一瞬のうちに切り捨ててしまった。



 そのまま、『ゲンとの距離』を華麗に刈りつくして、



「聖なる死の喝采を魂に刻め」


 と、ちょっと何言っているかわからない言葉をつぶやきつつ、

 倒れているゲンの腹部に、強烈な膝を叩き込んだ。


 あまりの衝撃と激痛に、

 ゲンは、


「ぶっはぁああああ!!」


 大量の血を噴射する。


「聖なる死は不平等だが、しかし、それがゆえに美しい。さあ、立ち上がれ、小さき者よ。貴様が享受すべき聖なる絶望は、まだ序章がはじまったばかり」


 などと言いながら、

 セイバーリッチ・プチは、

 ゲンに背を向けて、天を仰ぐ。


 そんな様子を横目に、ゲンは、



「……ぶほぉ……ぐへぇ……いや、ちょっ……まっ……つ、つよすぎん?」



 言いながら、フラつきながら、

 ゲンはゆっくりと立ち上がり、


「いや、もう……レベルが違うじゃねぇか……これ、完全に裏ボスレベルだろ……おそらくだけど『最初の草むらで、ミュ〇ツーが飛び出してきた』みたいな状況だろ、これ……」


 絶望に心を圧迫されるゲン。

 あまりにも唐突に『勝てるわけがない敵』と対峙したことで、

 普通に『SAN値(正気度)』がゴッソリと減少した。


 が、しかし、


「……ふざけやがって……なんだ、この状況……カスが……ぅううっ……」


 まるで、それがトリガーになったみたいに、



「なめんじゃねぇぞ、くそがぁあああ!」



 ギリっと奥歯をかみしめて、自分に気合をぶちこもうと大声で叫ぶゲン。


 セイバーリッチ・プチという明確な絶望を前にしたことで、

 魂魄の奥がグワっと燃え上がってきた。


 死んでも折れることを許さない、

 根性だけは無敵のエンジンがフル回転する。


 そんなゲンの視線の先で、

 刈プチが、

 両膝・両手を地につけたスタイルのまま、


「あ、あきらめろ! 勝てるわけがない! あいつは伝説の最強モンスターなんだぞ!」


 と、再度、絶望を口にした。


 それを横目に、ゲンは、


「もうわかったっつーの、うぜぇなぁ……テンプレネタをしつこく連発するんじゃねぇ」


 などとつぶやきながら、

 そこで、


(……あのヘタレからもらった護符……あたりが出れば人生が変わるとかほざいていたが……それが事実なら……)


 セイバーリッチの登場に慌てて、

 さきほど、雑に、ポケットに突っ込んでしまった護符を取り出すゲン。



「俺って、マジで、ガチャ運は、別によくないんだが……」



 そう言いつつ、

 ゲンは、


「……まあ、でも、とっておく意味もねぇしな。使わずに死ぬより、使ってから死んだ方が億倍マシだ」


 そうつぶやくと、

 迷いなく、宝くじの護符を使用する。


 すると、

 パンパカパーン!

 という、ファンファーレが鳴って、

 頭の中に、


『おめでとう。あなたは【パーフェクト・ラージャン・エグゾギア・プチ】を入手した』


 という、電子音が響いた。

 と、同時、



『素体融合、開始』



 どこからか声が響く。

 先ほどの声とは別モノだった。



『輝荒王(きこうおう)回路外骨格、構築完了』

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