41話 め、めんどくさ……

 41話 め、めんどくさ……


「魔法ラムドカード『死欲のツボ』、発動。デッキから7枚のモンスターラムドカードを墓地に送る」


 そう言うと、デッキから7枚のラムドカードを選び、

 『闇の沼(地面にオートで召喚される、異空間の入り口)』の中へと放り投げる。


 その後、デッキをシャッフルしてから、


「魔法ラムドカード『輪廻転生』、発動。墓地に存在するモンスターカード5枚を手札に加える」


 宣言すると『闇の沼』から、五枚のカードが飛び出してきて、

 ナイアの手札におさまった。


「さらに、魔法ラムドカード『無貌(むぼう)の施(ほどこ)し』、発動。デッキから5枚引き、その後、手札から3枚を墓地に捨てる」


 そんな一連を見ていたセイバーリッチは、


「ああ、なるほど、そうやって回すデッキなんだね♪」


 言いながらも、セイバーリッチは、ナイアの動向を見守る。


 その間、ナイアは遠慮なく、


「モンスターラムドカード『オクジュ・メシアライザー』、召喚。このモンスターの召喚に成功した時、デッキから儀式ラムドカードを手札にくわえることができる」


 デッキから一枚選んで手札に加え、軽くシャッフルしてから、


「儀式ラムドカード『仮面ドラゴンの秘儀』、発動。手札から、合計レベル『20兆』をこえるモンスターを生贄にささげることで、手札から『ゴーリエ』を特殊召喚できる」


 きわめて面倒な手順を踏むことでしか召喚できないモンスターの召喚に成功。

 混沌仮面デッキに内包されているラムドカードのレベルは3~5兆が精々。


 つまり、『仮面ドラゴンの秘儀』を発動するためには、

 ラムドカードを五枚ほど生贄にささげる必要がある。


 ここまで、流れるように、よどみなく展開しているが、

 実のところ、

 手札が事故っていた場合、

 ゴーリエを出すだけでも数分の時間を必要とする。


 究極超神級の極限戦闘状態において、数分のロスは当然命取り。

 そんな『事故』の可能性をはらんでいるがゆえに、

 混沌仮面デッキは真っ黒に光り輝く。



「モンスターラムドカード『仮面龍・ゴーリエ』、召喚」



 召喚されたのは仮面を纏っているドラゴン。

 なかなかの存在感を放っているが、


「えぇ? それが切り札ぁ? ぶっちゃけ、大したことないね♪ 存在値10兆くらいじゃないか♪」


「もちろん、こいつも生贄要員だ。混沌仮面デッキの面倒くささをナメんじゃねぇ」


 言いながら、ナイアは、


「魔法ラムドカード『ユングデッドの呼び声』発動。体力を三割消費することで、墓地から『哲学ゾンビのペルソナ』を二枚サーチ」


 闇の沼から、また二枚のカードが飛び出してきて、手札の中におさまる。


「これで、準備は整った。……儀式ラムドカード『無寿羅(むじゅら)の憧憬』、発動。場のゴーリエと、手札にある『哲学ゾンビのペルソナ』2枚を生贄にささげることで、俺は、この『とっておきの切り札』を場に召喚することができる。絶望の権化。歪なアイロニー。その慟哭は剣。つまりは――『オメェの出番だぞ』ってこった……さあ、こい、『仮面神獣フィロジュラ』!!!」



 出現したのは、

 仮面を纏った神の獣。


 神々しさの奥に見える醜悪な闇。

 邪気が渦巻いていた。

 まるで『不道徳という概念』を形にしたみたい。


 どこまでも禍々しい、

 嫌悪感を覚える歪なフォルム。


 仮面種の頂点。

 大神級モンスター『仮面神獣フィロジュラ』。



「ちなみに、こいつがフィロジュラの能力だ。確認しな」



 そう言いながら、ナイアが指を鳴らすと、

 セイバーリッチの目の前に、エアウィンドウ形式で、フィロジュラのステータスが表示される。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る