4話 ワクワクとドキドキがとどまることを知らない。

 4話 ワクワクとドキドキがとどまることを知らない。


 450億のつかいみちを悩みに悩んだ結果、ゲンが選択したのは、

 100億の『ラムド王デュエルクエストモンスターズ』と、

 350億の『P型ウィトゲンシュタインのアトリエ』の二つ。



 ※ ちなみに、ロコは入学直後に、

   アギトから、使用人経由で、

   900億円の『現金』を受け取ると、

   その足で、全宮学園内にある貸金庫を二つ借りて、

   一方は自分の分、もう一方はゲンの分という扱いにし、

   アギトから受け取った現金をキッチリ半分に分けてぶちこんだ。

   『カギを預けておく。好きな時に好きなだけ使えばいい』

   ロコからそう言われて、ゲンは『魔法がかかった小さな鍵』を受け取った。

   既にゲンはその金を使いきっているため、

   現在、金庫の中はカラっぽ。

   ゆえに、貸金庫のカギをロコに返しても問題ないのだが、

   『あんな大金、どうやって全部使った?』

   と詰め寄られた際の返答を持っていないため、

   まったく意味はないが、一応、今もカギを持っている。



 ――『数多ある商品』の中から、ゲンが、

 『ラムド王デュエルクエストモンスターズ』と

 『P型ウィトゲンシュタインのアトリエ』の二つを選択した理由は、

 ハッキリ言って、『インスピレーション』以外の何物でもない。


 往々にして『あまりに悩みに悩みすぎた場合』に起こる現象。

 あとあと『あれ? 俺、なんでこれを買った?』と自分に対して疑問符を抱く、人間特有の妙な性(さが)。


 たいていの場合、その手の性(さが)が発動した場合、

 後悔して涙を呑むのが常(つね)なのだが、

 しかし、ゲンは、自分の選択に満足していた。


(……完全に『もう、これでいいや』ぐらいの感じで買っちゃった二つだけど……説明書を読む限り、この二つはかなりいいな)


 どちらの商品も、非常に汎用性があり、

 やり方次第・努力次第という注釈はつくが、しかし、

 どちらにも、『最強』を狙える『凶悪な可能性』が秘められていた。


 『買った瞬間に自分が強化される系のアイテム』ではなかったが、

 しかし、キッチリと運用していけば、かなりの戦力になるのは間違いない。



(……『ラムド王デュエルクエストモンスターズ』と『P型ウィトゲンシュタインのアトリエ』。この二つ、どちらも、根気を必要とするアイテムだが、根気が必須の技能の方が俺にはあっている。『チートアイテムを手に入れて無双する』というのにも憧れるが、しかし、ちゃんと『最強』を目指すなら、地に足がついた能力の方がいい)



 どちらのアイテムも、正直に言うと、まったく派手さはない。

 もちろん、とんでもない性能のアイテムだが、

 相対的にみると地味目といわざるをえない。


 ただ、どちらも、汎用性と将来性が高い商品。

 『地道な努力』と『狂気の根性』に定評がある人間にとって、

 この二つは、すさまじく相性がいい。



(ラムドカード作成のためのモンスター討伐……アトリエでアイテムを創るための素材集め……やりたいことは山ほどある……さて、どこから手をつけていくか……)



 やるべき事と、やりたいことが、山ほどあって、着手に悩む。


 この時間が最高に楽しい。

 脳汁があふれてとまらない。

 ワクワクとドキドキで心臓がはちきれそう。


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