シューリ・スピリット・アースという神は、

 シューリ・スピリット・アースという神は、


「これまでも、何度か『無限転生の殺し方』を探したことがあったが、今日からは、これまでのような『コトのついで』ではなく、『全身全霊』で『無限転生を殺す方法』を探していく。俺がその気になってしまった以上、さしもの無限転生と言えど『お手上げ』だろう。俺を前にすれば、どんなバッドエンドも裸足で逃げ出す」


 現状、

 センの『生に対する概念』が、

 異次元レベルで『錯綜(さくそう)』しているため、

 当人だけ『理解が及んでいない』という、

 きわめて奇妙な状況に陥っているが、

 一応、ここで、言うまでもない前提を述べておく。



 センエースの消滅は文句なく最強のバッドエンドである。



「というわけで、改めて、頼む。俺が消えた後の世界を任せたぞ。俺が認める唯一の師、いと美しき最果ての究極超女神、シューリ・スピリット・アースよ」


『……』


 数秒の間をおいてから、

 シューリは、深いタメ息をついてから、


『……ぁあ、ぁあ、なんか、そういえば、そんなことを言っていたような気もしないではない今日この頃でちゅね。マジで興味クソゼロのカス案件だったから、キッチリすっかり忘れていまちた』


「お前ほどの高貴な神が、かわした約束を忘れるわけがあるか。というか、あってたまるか。なあ、シューリ、これはガチの頼みなんだから、ボケの連発でかき乱すのはやめてくれ」


『今回に限って言えば、ボケなんて、一発もカマしていまちぇんよ。いや、マジで』


 実際のところ、ボケという『小粋な領域』に収まる感情ではない。

 今のシューリを動かすエンジンは、

 『純粋無垢な怒り』の情動。


 この怒りは、愛の深さに比例する。

 シューリの愛は、そこらのヤンデレが束になってかかっても、吐息で瞬殺されるほどの異次元領域にある。


「……まあ、いいけど……ここで何を言っていようが、結局のところ、お前は約束を守ってくれるだろうし」


 恋は盲目。

 センは全力でシューリを誤解している。


 シューリは、センを愛しているから、

 センに対しては、絶対的な『義理』を尽くすが、

 しかし、『セン以外』に対して重厚な義理を貫くほど、

 シューリ・スピリット・アースは、

 『まっとうな神』ではない。


 本来の彼女は、

 他者を『虫ケラ』としか思っていない、

 超自己中心的なアルティメットサイコパス。


 『究極超邪神の封印』に命をささげようとしていたのも、

 『異常にプライドが高いから』以外に理由がなく、

 決して、多くの命のために自分を犠牲にしようとしたわけではない。


 『自分だけが死ぬ』か『全部死ぬか』の二択を前にした時、

 『自分だけ死ぬのはイヤだから、全員を巻き込んでやる』

 などという、ダセぇ選択をする自分は死んでも許せない――

 そんな、ちょっと何言っているかわからない『イカれたプライド』だけが、

 命をささげようとした唯一の理由。


 ※ ちなみに、シューリは、その本音をセンに吐露したことがあるが、

   恋盲目状態のセンは、シューリの発言を、ツンデレだと解釈した。

   が、実際のところ、シューリの発言にデレは1ナノもない。

   シューリ・スピリット・アースという神が、

   センエースという英雄以外に対してデレることは、

   絶対に、ありえないのだ。


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