生まれてきた意味は確かにあった。

 生まれてきた意味は確かにあった。


 バンプティの中に根付く、

 『仮バグ』に対して、

 一点集中の閃光を叩き込むセンエース。


 複数の銃口から撃ちだされた高次の閃光は、

 螺旋を描きながら収束して、

 『不具合』のみを狙い撃つ。



「ああああああああああああぁっっっっっっ!!!」



 極悪な閃光に打ち抜かれ、


「うぶはぁっ!」


 ドロっとした黒い血を吐き出すバンプティ。


 吐き出された黒い血は、

 ユラユラとゆらめきながら、

 陰すら残さず蒸発していく。


「ぅ……ぁ……っ」


 『バグった原力』を失ったバンプティは、

 その場でバタリと倒れこんだ。


 鏡が、その効力を完全に失って、

 ニセモノの後光が溶けて消えた。


 まだ、かすかに意識が残っているバンプティに、

 センは、


「……これだけ剥き出しでぶつかりあったんだから、さすがに、いい加減、理解できただろ。なあ、バンプティ。俺は……センエースは、やっぱり、しょうもなかっただろう?」


 そんな問いを受けて、

 バンプティは、


「……げほ」


 少量の赤い血を吐きながら、


「……いえ……」


 当然のように、神を否定して、


「……あなた様は……やはり……」


 魂の理解を並べて揃える。


「この上なく……尊い……命の……王……」


 その言葉を最後に、

 バンプティの意識は途切れた。


 その直後、グニャリと、体軸が歪んで、

 バンプティとスールは、

 元の二人に分断された。


 両者とも完全に気を失っていて、

 ゆっくりとした呼吸のリズムでしか動かない。


 柔らかな静寂が、センエースの耳をついた。

 ゆっくりとした時間だけが、

 穏やかに流れていく。


「好き勝手生きてきて、最後には、カンストになったことがつまんねぇからって、『世界が危機に陥ること』も十分にありえたにも関わらず、部下が虫ケラに奪われて魔改造されていく様を黙ってみていたどころか、推奨・手助けまでして……あげく、責任とか職務とかの『大人として捨てちゃいけない色々』を他人に押し付けて逃げようとしている最低野郎だぞ……どこが尊いんだよ……ふざけろ」


 そうつぶやいた直後、センは、


「はぁあ……ほんと、もう……」


 重たいタメ息をついてから、


「……うまくいかねぇなぁ、いろいろ」


 そうつぶやくと、


 ……パチン……


 と、軽めに指を鳴らした。

 すると、二人の体がスっと消えた。


 それぞれに、適切な『回復』と『記憶処理』をほどこしたうえで、

 バンプティは、裏ダンジョンゼノリカの『真霊上層』に送り、

 スールの方は、事務所の仮眠室に送った。


 簡単な後処理がすんだあと、

 センエースは、


「……ふぅ」


 深く、長く、息をついてから、

 目を閉じて、天を仰ぎ、


「極限の中で、もがき、あがき、たどり着いた、命の華……」


 自分自身を振り返りながら、


「俺は、自分勝手でサイコパスな最低の暴君だった。普通に最低だ。うまくいかないことも多々あって、なくしたものもたくさんある……が、俺は、俺が望む通り、ワガママに、力強く咲き誇ることができた。それは間違いない事実。そして、俺の願いは、俺の望み以上の美しい結晶となって、世界に刻まれた。もう、思い残すことは、何もない」


 清々しい笑顔で、


「……『この日のために生まれてきた』……と、心の底からそう思える『輝く日々』を積み重ねて、俺は『今日』に辿り着いた。何度目か忘れた誕生日。ハッキリ言える。生まれてきた意味は確かにあった」

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