狂信と共振。

 狂信と共振。


 五感が奪われた『真っ黒な世界』で、

 バンプティは息も出来ず、

 自分の輪郭を感じることもできない。


「うぷ……」


 深い闇に溺れる。

 ブラックアウト寸前。


 そんな状況でも、

 バンプティの『中』には、



(ぁあ、主よ……あなた様の言葉が、私の胸の中で輝いている……なんと、幸福な時間でしょう……)



 魂魄に刻まれたセンエースの言葉が、

 バンプティの全てを押し上げていく。


 どれだけの絶望を前にしても、

 主の光は、

 いつだって、

 バンプティの中で、またたいている。


 そんなバンプティを見て、

 仮バグは、焦った顔で、



「――ま、まだ抗うのか! 信じられん! なんだ、その胆力は!! どうして、そうなった……っ」



 と、そこで、仮バグは気づく。

 バンスールの中に、


「っっっ?!! こ、こいつっ……『狂信』の属性が追加されてやがるっ……いや、それだけじゃなく、『共振』のスペシャルまで……ヤバい、ヤバい、ヤバいぃいっ……すでに、『プライマル・オリジナル』の『異常性』――『その一部』が発現しているっ……こ、このままじゃ、マジで『コピーした数値』を飲み込んで、ぶっ壊れるまで膨らみ続けてしまうっ!!」


 ギリっと奥歯をかみしめて、


「しかたない!! こうなったら、とことんいってやる!! 全力のトドメだ!」


 そう叫ぶと、

 追加で、アイテムボックスから魔カードを取り出し、


「禁止魔カード、使用許可要請!」



『許可する』



「――はないちもんめ――」



 禁止魔カードの執行により、

 バンプティの魂は、

 さらに深い闇の奥へと引きずり込まれる。


 しかし、もはや、

 闇の質量など関係なかった。


 どれだけの暗闇に閉じ込められても、

 バンプティの中は、

 すでに『この上ない光』であふれている。


 ――だから、はねる。



 ……ドクンと、



 強く心臓が跳ねる音が確かに聞こえる。


 暗闇の底で、

 命のシャウト。


 再度、

 ドクンと、音がした。


 叫びのような鼓動音は、

 次第に強くなっていく。


 仮バグに飲まれて以降も『折れずに叫び続け』ていた、

 バンプティの『最後の意地』の部分が結集する。


「所詮はちっぽけな贋作。不出来なパチモンの分際で……な、なぜ、ここまで、強靭にあらがえる! くそがぁああ! ならば、もう一枚――」


 と、そこで、

 少し離れた場所で鎖につながれているスールが、



「――異次元砲――」



 繋がれた状態のまま、

 口を放出箇所として、

 豪快なゲロビ型の異次元砲をかましてみせた。


「ぐっはぁぅっ!!」


 想定外の圧力に吹っ飛ばされる仮バグ。

 そんな仮バグを見下しながら、

 スールは、


「猊下の……邪魔するなよ、虫ケラ……」


 ふりしぼりながら、

 吐き捨てるように、そう言った。

 今は、スールも、バンスールの一部。

 ゆえに、仮バグの力を使うことも不可能でない。


「ぼ、ボケがぁ……そこらを這ってるアリと変わらねぇクソカスザコの分際で、オレの力を勝手に使いやがって」


「どの口が言っていやがる……俺の魂魄を勝手に使いやがって……」


「お前のようなアリが、このオレに使ってもらえたんだぞ! 感謝しろ、ボケが!」

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