ここにいる。

 ここにいる。


 ソンキーとセンエースとアポロギスは、

 相性でいうと、ポケ〇ン御三家のように、

 綺麗に、三すくみになっている。


 この前提を踏まえて考えると、

 現状のバンスールは、センエースにとって最悪の相手と言えた。

 存在値は上回られており、

 相性は悪い。


 また、『戦闘センス』だけをとってみれば、

 ソンキーはセンエースを超えている。


 さらに言えば、アポロギスのビルドの中にも、

 センエースが『苦手とする領域』は存在する。

 リ〇ードンがソーラ〇ビームを覚えるように、

 センエースに対して効果抜群をとれる切り札を、

 アポロギスも、いくつか有しているのだ。


 バンスールは、『センエースにとって最悪』の結晶ともいうべき存在。


 結論。

 現状の『バンスール』は、センエースにとって、

 この世に存在する生命の中で『唯一の天敵』とも呼べる存在に昇華した。


 その事実を誤解なく真正面から受け止めて、

 咀嚼して、飲み込んだセンは、

 だからこそ、強く目を輝かせて、



「おお……見ただけでもわかるよ。すげぇ良い感じに仕上がったな。スキがまったくねぇ。この圧力……この重み……いいねぇ。ほんと、いい感じの戦闘力になったじゃねぇか」



 『具体的な戦闘力』を『見ただけ』で測定することは不可能。

 だが『感じること』は出来なくもない。

 今のバンスールは、とんでもない高みにいる。


 センエースの評定を受けたバンスールは、

 そこで、キっと、視線に力を込めて、

 己の魂魄に、最後の最後の気合をブチ込んでいく。


「これで、終わりではない! オレはもっと先へ行く!! オレの可能性全てで、貴様を殺す! さあ、刮目しろ! 貴様を超える神の誕生を見逃すな! ――開け、『究極完全体モード』!!」


 己を完全に解放する一手。

 究極超邪神の切り札。

 バンスールの全てが沸騰する。


 肉体が、魂魄が、命の全てが、

 戦闘に特化した武の化身へと変貌していく。


 死という概念の限界。

 想像しうる絶望の最果て。

 狂気の結晶。


 黒い輝きが落ち着いた時、

 そこには『この上ない最強』が立っていた。


「すべてが……完全に調律された……」


 バンスールは、己の両手を見つめながら、


「見てくれ……なぁ……どうだ? オレは、届いているだろう? 命の頂点に」


「ああ、大きいよ。間違いなく」


 センはそう言ってから、


「けど、頂点はそこじゃない。本当の頂点は、ここにある」


 そう言って、右手の親指で、自分の胸を指さした。

 ゆるぎない自信。

 絶対の覚悟。


 それを前にして、

 バンスールは、


「……すごいな……」


 心の底から、そうつぶやいた。


「オレがそっちの立場だったら言えない。……今のオレを前にして、これほどの力を目の当たりにして……それでも『自分こそが最強だ』……などと、オレでは、口が裂けても言えない」


 今だって、そうだ。

 数字の上では、センエースを超えているが、

 『自分こそが最強だ』とは言えなかった。

 『オレは最強だよな?』

 とビクビクしながら聞く事しかできなかった。


 そんなみっともないバンスールとは違い、

 センエースは、一貫して、堂々と、


「普通のヤツにはできねぇよ。俺だって、ガキの頃には言えなかった。至極、単純な話。――いままで必死になって背負ってきた全てが、俺に不遜(ふそん)を通(とお)させる」


 そう言いながら、

 センはゆったりと武を構える。

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