バーチャル・アポカリプス。

 バーチャル・アポカリプス。


「答えられる項目はたくさんある。試しに今の調子を尋ねてみろ」

「……お元気ですか?」

「あいむふぁいんせんきゅ」

「やかましわ」


 一連の流れを経て、

 カドヒトは、


(……おそらく、『絶対に答えなくてはいけなくて、かつ、バンスールが不利になる項目』もあるのだろう。そうでなければ、アリア・ギアスとして成立しない……それを探り当てるまで質問し続けてもいいんだが……)


 いろいろと考えた結果、


(まあいいや。別に、こいつの強化を防ぎたいわけじゃねぇし)


 心の中でそう決断すると、


「質問はもうない」


 カドヒトの決断を受けると、

 バンスールはニィと笑い、


「――とまれ」


 そう命じると、

 ナイトメアバンプティルーレットが停止する。


 12時の矢印が示したのは、



「仮想(バーチャル)・神羅萬象(アポカリプス)‐システム……発動」



 システムが発動すると、

 バンスールの手の中に、

 『名状しがたいスマホのようなもの』が出現し、


「俺の存在値を10000に変更する」


 ススっと、スマホを操作すると、

 その直後、

 バンスールの体が、深い黒に包まれた。


 グググっと、見て分かるほどに、

 バンスールの内圧が上がっていく。


 その様を見て、

 カドヒトは、




「……存在値10000……」



 ゴクっと息を呑んだ。


 その『魅力的な数字』に、

 カドヒトは目を輝かせる。



(マジか。いけるのか。『基礎存在値3000』の向こう側……)



 ワクワクした。

 ひさしぶりに。

 胸が熱くなる。


 基礎存在値のリミットは3000。

 覚醒技を使うことで、その値を膨らませていくことはできるが、

 基盤となる数字だけは、どうあがいても、

 3000以上にすることができない。


 それが、これまでの常識。

 絶対的な、世界のルールだった。


 目を輝かせているカドヒトに、

 バンスールが、


「みろ。センエース……これがオレだ」


 そう声をかけると、カドヒトは、


「俺はセンエースじゃねぇよ。カドヒト・イッツガイだ」


 ハッキリと、そう訂正する。

 もはや、あまりにも意味がないその訂正を受けて、

 しかし、バンスールはイラっとすることもなく、

 そのまま受け止めて、


「そうか、では聞け、カドヒト・イッツガイ。……これがオレの力。命の限界点。遥かなる高みに至った混沌。すべてを包み込む黒」


「いいねぇ、悪くない。マジでな」


 心からの言葉を受けて、

 バンスールは気をよくしたのか、


「くく……さあ、やろう。命を奪い合おう」


 深みのある笑みでもって、そう言い放った。


 そんなバンスールに対し、

 カドヒトは、己の魂魄に『冷静さ』を課しつつ、


「お前を悪くないと思っているのは事実だが、しかし、お前は、俺にとって大事な人間二人の融合体。だから、殺し合う気はない。『お前』は殺すが、その肉体は返してもらう。それが大前提」


「くくく……相変わらず、家族には甘いな。しかし、カドヒトよ。そもそもにして、なぜ、バンプティとスールを、みすみす、オレに奪わせた? 貴様であれば、防ぐことも可能であったはず。こちらは、貴様が動くであろうと仮定して色々と準備をしていたのに、すべてが無駄になった」


「ん? そんなもん言うまでもない。部下の覚悟をシカトするのは上司のすることじゃねぇ。そんだけ。――まあ、一番の理由は、お前の弱さだけどな。お前ごときからなら、なんだって、取り戻そうと思ったタイミングで取り戻せる」


「……もし、オレがお前の想像以上だったら? その責任はどうとるつもりだったんだ?」


「お前が、俺でもどうにも出来ないほどの存在だったなら、その時は、俺が、もう一段高いステージにのぼるしかない。となれば、さすがに、今の俺をしばっている限界も死んでくれるだろう。どっちにしろ、ハッピーエンドになる。俺がここにいる。だから、バッドエンドはもれなく全員死ぬ。それだけの話さ」


「……めちゃくちゃな皮算用だな」


「正確性皆無の皮算用に頼らざるを得ないほど、俺は次のステージに飢えている。それだけの話だよ」

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