バンスールの悪夢。

 バンスールの悪夢。


「完成。……バンプティとスールが合体して、バンスールってとこかな」


 などと口走る『バンスール』に対して、

 カドヒトは、


(まあ、当然、奪われるわな……さすがに、スールじゃ、バンプティBには抗いきれねぇ。そして、やっぱり、ゴタン化しただけ。普通に弱くなっている)


 心の中で、タメ息をつきつつ、

 パキパキと首をならしながら、


「混沌融合……か。んー……何かしらの特殊な融合なのかと期待したが、今のところ、大きな変化はみられないな。存在値は、さほど上がっていないし、戦闘力にいたっては、普通に低下しているように見える。まあ、そう見せているだけで、実は上がっているという可能性もなくはないんだが……その可能性は、実際のところ、かなり低そうだ」


 体軸の歪み率を見るだけでも、

 戦闘力のおおよそを予測することは出来る。


 もちろん、この手の『望診(ぼうしん)』は、

 『相手の事を深く理解している』という事が前提になるため、

 『初見の相手』を見抜くことは難しいし、

 そもそもにして、どれだけ積もうと、

 『完全な看破』は不可能で、

 永遠に『予測』の域を出ないのだが。


 ――カドヒトの評論を聞いたバンスールは、

 ニタっと黒く微笑んで、


「戦闘力など、どうでもいい。必要なのはカオスコアを増やすことだ」


 そう言うと、

 スゥっと息を吸って、


「まわれ、ナイトメアバンプティルーレット」


 宣言すると、

 『カオスバンプティルーレット』とはまた違った形状のルーレットが出現して、グルグルと、不気味な音をたててまわりはじめる。



「……まだ、五分は経っていないはずだが?」



「オレにまわせるルーレットが『一つしかない』と、いつから錯覚していた?」


 と、前を置いてから、


「ナイトメアは『その性質』を暴露しない限り、永遠に回り続ける」


「暴露のアリア・ギアスを積むことが前提か。となると、耳をふさいだ方がいいのかな?」


「関係ない。オレに暴露する意思があったかどうかと、そのために行動を経たかどうかと、その二点を相手に伝えているかどうかのみが重要」


「なるほど、すでに『耳をふさぐべき時期』は過ぎているってことか。なら、聞いておいた方がいいよな。さ、どうぞ。教えてくれたまえ」


「偉そうに言うな、鬱陶しい」


 吐き捨ててから、


「ナイトメアの出目はランダムではなく、確定で『カオスシステム』が追加される鬼仕様。ただし、混沌融合でカオスコアを追加している必要がある。ナイトメアのクールタイムは半日。システムを使用できる時間はクールタイムと並列。以上だ。質問があれば受け付ける」


「……質問を受け付けなければ成立しない暴露か。なかなか重たいアリア・ギアスだな。しかし、その分、効果は絶大だろう」


 カドヒトはニィと笑って、


「質問一、お前は誰だ? 名前じゃなく、お前という概念について教えろ」


 曲解でもって踏み込んでいく。

 『現状』は『質問の受付が開始された』だけであり、『ナイトメアバンプティルーレットについての質問』だけが認められているというワケではない。


 ――と、勝手にそう判断したカドヒトは、

 ズバっと踏み込んだ質問をしてみたのだが、


「禁だ」


 バンスールは、サラっとそう答えた。


「……禁?」


 カドヒトの疑問に対し、

 バンスールは首を軽く横に傾けて、

 人差し指をたて、ウインクしながら、


「禁則事項です♪」


 と、かわいこぶってみせた。

 かるくイラっとしたものの、

 カドヒトは、冷静に、


「……なるほど。では、追加されるシステムの数と詳細は?」


「長だ」


「……はぁ? ちょう?」


「長くなりすぎるため、ご容赦願います♪」


 その、あまりにも『ふざけきった返答』を受けたカドヒトは、

 しっかりとイラっとした顔で、


「……お前、なんの質問なら答えるんだ?」


「答えられる項目はたくさんある。試しに今の調子を尋ねてみろ」


「……お元気ですか?」


「あいむふぁいんせんきゅ」


「やかましわ」


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