汚物は消毒。

 汚物は消毒。


 バグの異常性を理解すると同時、

 バンプティの覚悟が燃え上がる。


 危機的状況下でこそ、たぎる脳みそ。

 『世界を支える柱』としての覚悟は伊達じゃない。



 バンプティは、即座にオーラと魔力を練り上げていき、

 超々速攻で、

 『一人の修羅』と化すと、



「汚物は消毒じゃぁあ! 異次元砲ぉおおおおおお!!」



 強力な魔法でバグを叩き潰そうとしたが、


「ギギッ……異次元砲……」


 その『バグっぽい虫(以降、仮バグ)』は、魔法で返してきた。

 ぶつかりあう無属性のエネルギー。


 その様を見て、カドヒトが何より驚いたことは、




「キェエエアアアア、シャベッタァァァァァァ!!」




 その一点につきた。


 かつてのバグは、軽い鳴き声を出したり、

 テレパシー的な感じで意思表示をしたりはしていたが

 正確に言葉を発することはなかった。


 魔法を使ってくることもあったが、

 すべて無詠唱だった。


 ――カドヒトが、渋い顔で、


(……バグそのものではないような気がする。コアオーラの質が違いすぎる。だが、似ていると感じさせる。奇妙で不愉快……何より心がザワつく……)


 心の中で、そうつぶやいている間も、

 異次元砲同士のぶつかり合いは続いていた。


 かなり長尺のせめぎ合い。

 どうやら、互いの魔力は拮抗していたようで、

 異次元砲のぶつかり合いは、

 最終的に相殺という形でおちついた。



「ちぃい……私の異次元砲をかき消すとは……間違いなく、ただのザコモンスターではない……」



 バンプティは、さらに警戒心を引き上げつつ、


(だが、聖典のバケモノほどの脅威度ではない……聖典に書かれているバグは、ゾメガ様ですら殺せなかったという、文字通り『ケタ違い』の災厄……私程度は一瞬で殺せてしかるべき)


 こころの中で、敵を分析していく。


(姿かたちは、かつてのバグと多少似ているようだし、存在値も侮れない……)


 情報を並べて、そろえて、咀嚼して、

 それから、結論を出す。


(しかし、かつてのような災害に至るほどの脅威ではないと判断する。危険度は間違いなく『壊れ堕ちたモンスター級』だが、しかし、それ以上の脅威ではない。……私一人でも、どうにか出来る程度……ならば、あとの話は単純自明)


 バンプティの魔力とオーラが、

 限界近くまで練り上げられていく。


 これまで、必死になって『積み重ねてきた全て』を充満させていく。


 心と体が一致して、

 魂魄が武者震いしている。


 完全臨戦態勢に入り、

 いつでもOKになったところで、

 バンプティは、バグの一挙手一投足に注意を払いながら、



「……一応、聞いておく。対話は可能か?」



 その問いに対し、

 仮バグは、気持ち悪い口を開いて、


「ギギッ。できるさ……一応な。オレは格が違うんだ……」


「ならば、聞く。私の空間に介入してきた理由は?」


「ギギッ……貴様には知る資格がない」


「そうか……では、質問を変えよう。貴様は『世界に対する脅威』か? もし『そうではない』というのなら、意味なく駆除したりはしないが?」


「ギギギギギッ……いきなり異次元砲をブッパしておいて、よく言う」


「無遠慮に私のパーソナルスペースに入ってきたそっちが悪い]


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