リアリストには理解できない光。

 リアリストには理解できない光。


『これだけ努力している俺を置き去りにするほどの努力を、あなたたちは積んだのだろう。もちろん、俺より才能があったからというのも要因の一つだと思うが、それだけでは、その高みまでたどり着けないという想像ぐらいはつく。……すごいよ……本当に……あなたたちは……美しい……』


 本気の敬意に包まれる。


 『努力を怠った者』は『成功者』をねたむが、

 最低限以上の努力を積んだ者は『高みに至った者の狂気』に敬服する。


 狂おしいほどの絶望を知っているスールは、

 魂の底から、ゼノリカを敬愛している。


 ――だからこそ、スールは、センエースという偶像が許せない。

 『そんなくだらない嘘でゼノリカという光を穢してはいけない』

 と、心が強く喚(わめ)いている。



「センエースなんて神は存在しない。するわけがない。こんな『頭の悪い妄想』に頼るべきじゃない」



 スールの本気の想いを受け止めたパメラノは、

 数秒の沈黙を経てから、


 『ふぅ』と長めの息をつき、


 天を仰いで、

 けだるげに、



「リアリストには理解できんじゃろうな。あの輝き、あの狂気」



 パメラノは、一貫して、

 『主の実在を伝えるため』に『説得しよう』とはしていない。


 『無駄だ』ということが十全に理解できているから。

 パメラノは、一般人に対して『センエースという神を理解してもらうための説得』はしない。

 しても意味がないと知っているから。

 肌で触れなければ、あの暖かさを理解することなどできるはずがないから。


 この点に関しては『一度も説得を試みずにハナから諦めている』のではない。

 これまで散々やってきて、

 今でも『見込みのあるやつ』に対しては説得を続けているが、

 『結局、まともには理解されなかった』というそれだけの話。


 九華十傑の第一席ジャミ・ラストローズ・B・アトラーは主を信じていない。

 パメラノは、ジャミが生まれて間もないころから、

 ずっと、ひたすらに、根気強く、主の美しさを散々といてきたが、

 しかし、いまいち、心に刺さっている様子はない。


 『あの光に触れていない者』には伝わらない。

 伝えることなど出来るはずがない。


 平和ボケした現代の若者に、地獄を切り開いた男の狂気など伝わるはずがない。




 ――誰もが明日をあきらめた『地獄の底』で、


『命令だ。前を向け』


 たった一人、


『ここには俺がいる』


 全ての命が叫んだ『助けてくれ』って慟哭を受け止めてくれた、


『見せてやるよ、希望。殺してやるよ、全部』


 あの尊き光を、


『根こそぎ、終わらせてやる。すべての絶望を殺してやる。世界を救ってやる』


 本を読むだけで理解することなど、


『お前たちの先頭には、いつだって、必ず、俺がいる!

 必ず、お前らの前に道をつくってやる!

 だから、前を見る事だけはやめるな!

 目をそらすな!

 絶対に、俺の背中から目を離すんじゃねぇえええ!!』


 ――できるはずがないのだ。




(下手に努力を積んだ者ほど、主に対する疑念をいだきがち……この世界の『あるある』じゃな。絶望の重さを知れば知るほど、『命の王』など存在するわけがないと思いたくなってしまう人のサガ――)



『全部、背負ってやるよ。

 なにもかも全部。

 全ての絶望、希望、想い、願い、命、心、全部。

 俺はセンエース。お前たち全員の王だ』



(――矮小な己を苦しめている『その壁』を、当たり前のように越えていく存在などいるわけがない、という、もはや脊髄反射ともいうべきメンタル防御思考)



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